奴隷首輪の本来の用途
競売台で、ユノアは百人の奴隷と一緒に売られていた。
彼女は道具の用途を鑑定できる。それを知った商会主は、壊れた魔道具の選別に使い、用済みになると首輪を付けた。
【用途鑑定:対象が造られた本来の目的と、最も正しい使い方を表示する】
「この首輪の用途を言ってみろ」
商会主が鎖を引く。
「奴隷を服従させるため、でしょう」
観客が笑った。誰もが知る答えだ。
だがユノアの鑑定には、別の文字が出ていた。
古代の職人は、首輪を奴隷のために作っていない。王へ不当な命令を出させないための「暴君拘束具」だった。後世の商人が術式の向きを逆にし、弱い者へ付けただけだ。
競売が始まる。商会主は最初の少女へ命じた。
「跪け。逆らえば締め殺す」
首輪が赤く光る。
ユノアは表示された正しい使い方を読み上げた。
「不当命令を発した者を、拘束対象に指定する」
百個の首輪が一斉に外れた。
銀の輪は空を飛び、商会主と買い手たちの首へはまる。彼らが「捕らえろ」「殺せ」と叫ぶたび、自分の輪だけが強く締まった。
護衛は剣を抜けない。彼らもまた借金で縛られた雇われ人だったからだ。ユノアが鎖を拾い、商会主の前へ立つ。
「命令してください。私たちに自由を与える、と」
「誰が――ぐっ」
輪が縮む。
「じ、自由だ! 全員、自由にする!」
契約書が燃え、競売台の檻が開いた。観客席から逃げようとした貴族たちは、元奴隷たちに囲まれる。
ユノアは首輪を壊さなかった。市の衛兵へ鎖ごと渡す。
「本来の用途で、裁判まで保管してください」
解放された少女が、初めて自分の名前を競売台の帳簿へ書いた。それを合図に、百人が値札を剥がし、代わりに名前を書いていく。買い手の一人が爵位を盾にしたが、首輪は身分ではなく命令の正しさだけを判定した。衛兵隊長は商会の保管庫を開放し、奪われた賃金と身分証を一人ずつ返すよう命じた。今度の命令に首輪は反応しなかった。
百人が自由な足で階段を降りた瞬間、彼女の職業欄も束縛を脱いだ。
【職業:道具用途鑑定士 → 神器本義鑑定者】