慈悲の骨
処刑広場で、ヴェシュの背中から新しい肋骨が突き出した。
決闘相手の司教騎士が砂へ倒れる。群衆が叫び、石柱につながれたエナトの首から縄が外された。
勝利は彼女の無罪を意味する。
だがヴェシュは倒れた騎士の喉へ、もう一度剣を下ろそうとした。
「終わった!」
エナトが叫ぶ。
剣先が皮膚に触れる寸前で止まった。
ヴェシュの能力は《勝骨》と呼ばれる。敵に勝つたび骨が一本増え、その骨が次の戦いで身体を強くする。代価はためらいだ。一勝ごとに、何かを傷つける前の一瞬が短くなる。
最初のころは鶏を絞めるにも震えた。十勝後には敵兵の腕を迷わず落とせた。二十勝後、降伏した者を斬っても眠れた。今、体内の骨は二百二十五本。人より十九本多い。
「剣を捨てて」
エナトが近づく。
広場の壇上で、大審問官が立ち上がった。無罪判定を覆すため、杖から黒い鎖を放つ。鎖は群衆の首へ巻きつき、何十人もの命を盾にした。
「私を斬れば鎖は締まる」
大審問官が笑う。「迷え、骨男」
ヴェシュには、もう迷いがほとんどなかった。
彼は剣を投げた。刃は大審問官ではなく、杖の宝石を砕く。鎖が緩む。続けて壇上へ跳び、素手で敵の胸を貫いた。
勝利。
二百二十六本目の骨が、心臓の周囲へ檻のように生えた。
広場は救われた。エナトが彼の腕を掴む。
「帰ろう」
その手を、ヴェシュは反射で振り払った。細い腕が折れる音がした。
彼女の悲鳴を聞いても、剣を止めたときのような何かは起こらない。敵意のない者を傷つけてはいけないというためらいまで、最後の勝利で失っていた。
「近づくな」と彼は言った。
自分を守るためではない。次に動けば、彼女を殺すと分かっていたからだ。
エナトが泣きながら後ずさる。
ヴェシュは両腕を自分の背中へ回し、突き出た余分な肋骨を掴んだ。それを前へ折り曲げ、自分の腕と胴を囲む檻にする。
骨が噛み合い、彼は立ったまま動けなくなった。
群衆は英雄を讃えた。
檻の内側で、ヴェシュの顎には二列目の歯が生え始めていた。次の勝利を欲しがる身体だけが、静かに笑っていた。