板一枚で百箱
港では、船一隻を空にするのに丸一日かかった。
荷役夫が箱を一個ずつ肩へ担ぎ、桟橋と倉庫を往復する。急げば落とす。慎重なら次の船が沖で待たされる。
「人を倍にすればいい」
港務官は朔の案を退けた。
だが人を倍にしても、狭い桟橋でぶつかるだけだ。
朔は箱を十六個ずつ、厚い木の板へ載せて縄で固定した。板の下には、持ち上げ用の隙間を二本。港に一台だけある荷揚げゴーレムの爪が、そこへ差し込める高さに揃えた。
船が着く。
いつも通り荷役夫が一箱目を担ごうとすると、朔が止めた。ゴーレムが板ごと十六箱を持ち上げ、桟橋の荷車へ置く。荷車はそのまま倉庫へ入り、板ごと床へ下ろした。
一往復で十六箱。
百九十二箱が、十二往復で船から消えた。かかった時間は十八分。破損は一箱もない。前回、同じ量には四刻と二十三人が必要だった。
余った荷役夫十一人は仕事を失わなかった。朔は彼らを、板への固定、倉庫内の検品、次船の係留へ回した。肩へ箱を担がないため、疲労で手を滑らせる者もいない。昼までに負傷届はゼロだった。
倉庫では板のまま升目へ置ける。出荷時も十六箱を一度に動かし、積み直しがない。帳面の『一板十二』という記録と実物がそのまま対応し、数え間違いまで減った。
沖で待つ船一隻につき発生していた停泊料、銀貨八十枚も、その日から消えた。
港務官は時計塔を見上げた。まだ次の鐘まで時間がある。
そこへ嵐の旗を掲げた商船が入港を求めてきた。積荷は濡らせない薬草百箱。普段なら先の船が終わるまで沖で待たせるところだが、空いた桟橋へすぐ着けられた。
薬草箱も板へ載せ、十分で倉庫へ入る。外套を濡らした船長が箱を開けると、乾いた青葉の匂いが立った。
「一箱でも濡れれば金貨百枚の損だった」
港務官は人員増加の申請書を破り、朔の板を足で確かめた。
「この板を何と呼ぶ」
「荷を一単位にする台です」
「名前は後で決める」
港務官は港湾組合の契約印を押した。
「全船会社に寸法を通達する。朔、お前を荷役改革官として採用する」