炭三十袋ぶんの夜仕事

王立鍛冶場では、剣百本を打つたび炭が八十袋消えた。

以前は五十袋で足りていた。鍛冶頭は炭商人が袋を小さくしたと怒り、代金を半分しか払おうとしない。

史弦は前世で工場原価を見ていた。袋の重さを十袋だけ量る。すべて規格どおり。値段も先月と同じだった。

炭商人は、代金を払われなければ家族ごと町を出るしかなかった。袋を小さくしたと罵られ、広場で秤まで壊されている。史弦も転移直後は鍛冶の腕がないと追い払われたため、数字だけで職人を裁く怖さを知っていた。だから重さと価格を先に確かめ、商人側の差が零だと示した。

昼の炉は鐘とともに消される決まりだった。ところが第四炉の煙突だけ、夜明けの空へ細い熱を吐いている。標準との差三十袋を、誰かが別の製品へ変えている。史弦が灰の下から短剣を一本持ち上げると、鍛冶頭はようやく、余分な炭が無能な職人の失敗ではなく、利益を隠すための燃料だったと悟った。

彼は壁へ二行だけ書いた。

標準、剣百本で五十袋。実際、剣百本で八十袋。

価格の差は零。使った量の差は三十袋。その三十袋だけが、昼の百本に結びつかない。炭商人を責める数字ではなく、誰かの隠れた仕事を示す数字だった。

「商人ではなく、炉の中です」

鍛冶頭は職人の腕を疑うなと怒鳴った。だが史弦は昼の生産札を数えた。百本すべて、標準時間で仕上がっている。余分な三十袋は、昼の剣には使われていない。

夜明け前、史弦は冷えたはずの第四炉へ手をかざした。まだ熱い。灰を掻くと、王家の印のない短剣が二十本現れた。

夜番の親方が、王の炭と炉を使って密売品を打っていたのだ。三十袋という差は、隠した夜仕事の原価そのものだった。

炭商人への未払いは撤回され、親方は衛兵に連れられた。鍛冶頭は百本の剣と五十袋の炭を前に、何度も数え直す。

翌日の試運転では、消費はぴたり五十袋。余分は一袋もない。炭商人の子どもたちが、広場で初めて笑った。

王の武具官は史弦へ、鍛冶場の全材料を記す銀板を渡した。

「標準から外れた一袋を見逃すな。原価監督官として雇う」