無実の娘は護送できません
囚人護送人ペラージュは、罪人と同じ車に乗る卑しい役目だと嫌われていた。
牢から法廷、法廷から刑場へ、鎖につないだ者を逃さず運ぶ。判決を下すのは裁判官、罪を暴くのは騎士。彼女は考えず歩けと命じられ、囚人に水を渡すだけでも減給された。
技能も命令へ従うためのものに見えた。
【刑送:判決を受けた罪人を、執行地まで逃さず運ぶ。罪人の身元は判決内容によって定まる】
裁判長は最後の一文を「名前の照合だ」と決めつけた。
大商人殺しの判決が出た朝、護送車に乗せられたのは給仕娘だった。宴席の銀杯へ毒を入れ、遺産を奪うため主人を殺した罪。だが娘に遺産はなく、毒を買う金もない。証拠は公爵家の若君が提出した、娘の部屋にあった毒瓶だけだった。
娘は一晩中、触っていないと訴えた。裁判長は公爵の寄付金を数えながら、護送を急げと命じる。刑場では日没を待たず、すでに斧が上がっていた。
ペラージュは処刑台の前で車を止めた。
「なぜ降ろさない!」
「この人を運べません」
判決書には、罪人の名より先に罪の内容が記されている。《銀杯へ毒を入れ、遺産を得る者》。技能が定める身元は、その行為をした者だ。
ペラージュは判決書を護送鎖へ巻き、一度だけ前へ引いた。
娘の手首から枷が外れた。鎖は石畳を蛇のように走り、公爵家の観覧席へ飛び込む。次の瞬間、若君が豪華な椅子から引きずり出され、護送車の中央へ転がった。
指には毒を仕込める銀の指輪。懐からは大商人の遺言書を偽造した下書きが落ちる。逃げようとしても、判決を受けた罪人は執行地まで逃れられない。
裁判長が判決を取り消すと叫ぶと、群衆から百枚の同じ筆跡の冤罪記録が投げ込まれた。護送兵たちは娘ではなく、裁判長の周りへ槍を向ける。
ペラージュは給仕娘へ水筒を返し、今度こそ正しい罪人だけを処刑台の前へ届けた。
解放された娘の母は処刑台へ駆け寄ったが、ペラージュへ頭を下げる前に水筒を受け取り、娘へ飲ませた。護送の列を恐れて閉ざされていた窓が、帰路では一枚ずつ開いていった。
《職業が【囚人護送人】から【天律護送官】へ書き換わりました》