盗まれた粗大ごみ券
粗大ごみ置き場に、古いソファと壊れた冷蔵庫が置かれた。
どちらにも収集券が貼られていない。管理人が警告札を付けると、五〇一号室の御神楽川澄香は三〇二号室の前を指した。
「あそこの人、引っ越すって言ってました。きっと置き逃げです」
疑われた春日森瑛都は、処分予定の家具などないと否定した。ところが翌日、瑛都の名前が書かれた収集券がソファへ貼られていた。
澄香は住人へ写真を送り、〈最後まで迷惑な人〉と書いた。
瑛都は券の番号を見て、自治体へ確認した。
その番号は、自分が一か月前に申し込み、処分済みの小型棚へ使ったものだった。控えには回収日の押印もある。同じ券が再発行されることはない。
大家はごみ置き場のカメラを確認した。
午前四時、澄香がソファと冷蔵庫を台車で運び込み、瑛都の古い収集券をスマートフォンで撮影した画像から印刷して貼っていた。印刷紙は雨で滲み、券の偽造防止模様も欠けている。
さらに、澄香が本物の収集券をどこから得たかも映っていた。一か月前、回収後の棚から券の半分を剥がし、持ち帰っていたのだ。
澄香は、瑛都を驚かせる冗談だと弁明した。
「家具は私のものじゃない。知人に頼まれて置いただけ」
配送伝票は澄香の部屋宛て。冷蔵庫の製造番号は、家電店の購入履歴と一致した。買い替え時の回収料金を惜しみ、業者へ「自分で処分する」と断っていた。
自治体職員は、収集券の複製使用と不法投棄について調査すると告げた。大家は、監視映像を含む虚偽の中傷、共用部への大型ごみ放置、過去二回の警告を理由に、契約解除を通知した。
澄香は瑛都へ泣きついた。
「掲示板の投稿は消す。券代も払うから、退去だけは止めて」
瑛都は投稿のスクリーンショットを管理会社へ渡した。
「消せば、なかったことになると思ったのは、券も同じですね」
自治体職員が偽造券を証拠袋へ入れ、大家が明渡期限を読み上げる。
本物の収集券が一度しか使えないと確認された瞬間、瑛都へ貼られた濡れ衣は剥がれ、澄香の契約だけが再利用できないものになった。