締切日の障害ログ

介護休業の申請画面には、〈期限後〉の赤い文字が出ていた。

人事部の新津恵麻が確認したのは、父親の退院に合わせて一か月休む社員の申請だった。受理されなければ、来週から無断欠勤として扱われる。申請日は締切翌日の午前零時三分。

「例外は作らないで。不受理にして、本人へ有給を使うよう案内して」

課長は言った。

「家庭事情を一件ずつ聞いていたら、人事が回らない」

後輩は不受理メールを下書きしていた。文面には、〈期限を守れなかったため〉とある。

恵麻は社員から届いた添付画像を開いた。締切日の二十三時五十八分、送信ボタンの横に〈処理中〉と表示されている。社内システムの監視ログを確認すると、二十三時五十六分から零時二分まで、申請サービスだけ応答が止まっていた。社員の入力内容は待機列へ残り、復旧後に登録されている。

問い合わせ履歴には、本人が二十三時五十九分に人事へ電話し、営業時間外の案内を聞いた記録もあった。父親の退院手続きを終え、病院の廊下から申請したらしい。不受理メールを送れば、その夜の三分を本人の不注意として説明させることになる。

「不受理メールは止めて。本人に同じ事情をもう一度書かせなくていいから」

恵麻は後輩へ障害ログの見方を示し、受付時刻を〈送信操作時〉へ修正した。課長は画面を覗き込み、表情を曇らせた。

「システム上は翌日だよ。ここで通したら、みんな画像を持ってくる」

「今回は画像ではなく、会社のログがあります。遅れたのは本人ではありません」

恵麻は申請を受理し、無断欠勤の予定処理を解除した。さらに、締切前後に障害が起きた場合は待機列の時刻を確認する手順を作り、家族の病名や介護内容を再提出させない項目も加えた。

社員へ送ったメールは短かった。

〈申請を受理しました。追加説明は不要です〉

送信後、恵麻の画面に制度改定プロジェクトの参加依頼が表示された。これまでは忙しさを理由に断っていた仕事だった。

彼女は〈参加する〉を選び、最初の議題へ〈障害時の受付基準〉と入力した。