霊媒師三人と無口な幽霊

旧家の除霊に、三人の霊媒師が呼ばれた。

蓬田礼羽は水晶を置いた。

「この家には女の霊がいる」

法衣姿の男が言う。

「いや、武士の霊だ」

白髪の老女は耳を澄ます。

「子どもが泣いている」

家主は困った。

「三人とも違いますが」

礼羽は男を指す。

「あなたの武士霊が、私の女霊を隠している」

男は老女を見る。

「子どもの声は、あなたの守護霊だ」

老女は礼羽へ返す。

「水晶に映る女は、あなた自身じゃ」

「霊障のなすりつけ合いはやめてください」と家主。

二階から、しくしく泣く声がした。

三人は同時に家主の後ろへ隠れた。

「専門家ですよね?」

礼羽が咳払いする。

「霊を油断させる配置です」

男もうなずく。

「家主を媒介に」

老女はさらに後ろへ回る。

「年長者を守るのが礼儀じゃ」

声は廊下を移動し、今度は低い男のうなり声になった。

礼羽が男を指す。

「武士霊、当たり」

男は老女へ言う。

「子どもが成長したのだ」

「数分で?」

家主が青ざめる。

「複数いるのでは」

三人が声をそろえる。

「それは追加料金です」

家主は三人へ役割を決めさせようとした。

「女の霊は礼羽先生、武士は法衣の先生、子どもは老女先生で」

礼羽が反対する。

「担当制にすると霊が移動した時に困る」

男も言う。

「危険な霊だけ私へ寄せる気では」

老女は塩袋を抱えた。

「儂は子守の依頼で来たのではない」

「さっき子どもの霊と言ったでしょう」

「言うのと受け持つのは別じゃ」

襖が勝手に開いた。

中は暗く、誰もいない。

礼羽が水晶を掲げる。

「女の霊よ、名を」

男が数珠を振る。

「武士よ、成仏せよ」

老女は塩を投げる。

「子どもは早く寝なさい」

部屋の隅から、また泣き声。

家主が畳をめくると、小さな録音機が出てきた。隣には動作感知センサーと、声を変える玩具がある。

そこへ家主の孫が帰ってきた。

「夏休みの自由研究、見つけた?」

廊下を人が通るたび、録音した声を男女や子どもへ変換して流す〈幽霊発生装置〉だという。

三人の霊媒師は黙った。

孫が尋ねる。

「どの幽霊が本物だった?」

礼羽は水晶をしまった。

「三人の解釈が、それぞれ現れた」

家主が答えた。

「現れたのは請求書だけです」

無口だった幽霊は、最初から機械だった。