風が挽いた一皿

宮廷製粉所を追われたユーディトの罪は、一度に一人分しか挽けない臼を作ったことだった。

戦時中、王は一晩で兵五千人分の粉を求めた。彼女の《風食み臼》は、そよ風を食べてゆっくり石を回す。燃料も水路も要らないが、急げと命じるほど回らなくなる。

「役立たずの道具と、辺境で飢えろ」

そう言われて着いた小屋には、去年の小麦が一袋だけ残っていた。

ユーディトは初日に畑を耕さなかった。まず、この土地で最初の一枚を食べる。それだけにした。

戸口へ臼を置き、上石の穴へ小麦を一椀入れる。

「急がなくていいよ」

山から下りた風が、臼の小さな羽根へ触れた。ごろり。石が一度回る。草の匂いを含んだ風が来るたび、ごろり、ごろりと音が続いた。

王都の巨大水車より遅い。だが粉は熱を持たず、白く細かく、指の間で雪のようにほどける。殻だけは外側の皿へ飛び、食べる部分を無駄にしない。

一椀の麦が、一椀の粉になるまで、ユーディトは薪を割り、井戸から水を汲んだ。時計を見なかった。臼の音が止むまでが仕事で、止んだら休み。それでよかった。

戻ると臼は自分で止まり、最後の風を吐くようにふうと鳴った。受け皿には、こぼれた粉が一筋もない。大量生産の床で毎晩捨てられた白い山を思い出し、彼女は掌で粉をそっと撫でた。

粉へ塩と水を混ぜ、薄く伸ばす。油を引いた鉄板へ置くと、生地がふくらみ、ぱちぱちと小さな泡を破った。焦げ目の香ばしさに、腹が正直な音を立てる。

そのとき王都の転送鐘が鳴り、白い封書が床へ落ちた。

『軍用製粉所、燃料枯渇。即時復職せよ。功績は再評価する』

ユーディトは封を見つめ、焼けた生地を裏返した。金色の面から湯気が上がる。

再評価など、もう要らない。

臼は誰にも急かされず、窓辺で風を待っている。彼女も同じだった。

封書を開かず棚へ置き、焼きたてを二つに折る。中へ山羊乳のチーズを挟むと、熱でとろりと溶けた。

「一人分で、ちょうどいい」

その夜、辺境の風が挽いたのは、兵糧ではなく彼女の夕食だった。