首のない証言
斬られた首は、七つの問いにだけ真実で答える。
その代わり、問いを発した処刑人の心臓は一つずつ鼓動を失う。七問目を聞けば、答えが終わる前に死ぬ。
バルカが斬った密偵ネネアの首は、籠の中で目を開けた。彼女は城主毒殺の犯人として処刑された。だが死ぬ直前、唇だけで「娘を探して」と告げた。
「城主へ毒を盛ったか」
「いいえ」
一つ、鼓動が抜けた。胸の中に小さな空白ができる。
「毒を盛った者を知っているか」
「はい」
二つ目が消える。
見届け役の宰相が立ち上がった。「規定の確認は済んだ。首を焼け」
バルカは籠を抱えて後ずさる。兵が囲む。処刑台の下には、ネネアの娘らしい少女が縛られていた。母が自白しなければ共犯として殺すという脅しだったのだ。
「犯人は、この広場にいるか」
「はい」
三つ。
「城主の死で利益を得る者か」
「はい」
四つ。視界が暗くなる。心臓は時々、階段を踏み外したように止まった。
宰相が剣を抜く。「それ以上問えば反逆とみなす」
バルカは首へ顔を寄せた。
「犯人は宰相か」
ネネアは「いいえ」と答えた。
群衆がざわめき、宰相が笑う。バルカは五つ目の鼓動を失いながら、その笑い方を見た。安堵ではない。予定通りという顔だった。
「城主は、本当に死んだか」
「いいえ」
六つ。
広場奥の棺が内側から鳴った。毒は仮死薬。城主を死んだことにして、その名で粛清命令を出す計画だ。
最後の問いを使えば、バルカは死ぬ。使わなければ首謀者は分からない。少女が泣かずに母の首を見ていた。
「命令を出したのは――」
宰相が飛びかかる。
バルカは七つ目を問う代わりに、自分の胸へ処刑剣を突き立てた。刃を通して残りの鼓動を首へ渡す。処刑人の命を死者へ返せば、首は一息だけ身体なしで自由に語れる。
ネネアの首が高く叫んだ。
「王妃です!」
宮殿の窓で、白い影が逃げた。兵たちが一斉に向きを変える。棺が開かれ、城主が息を吹き返す。
少女は処刑台へ上がり、母の首と倒れたバルカの手を抱いた。
やがてバルカの胸で何かが動いた。鼓動ではない。石を打つような硬い音だった。
彼は目を開けたが、瞳は灰色に固まり、胸には黒い石の心臓が七度だけ光った。以後、彼は生きたが、二度と誰の脈にも温かさを感じなかった。