魔獣の名前をまとめてしまう

迷宮荷役のイグナートには、同じ品をまとめるだけの収納しかなかった。

矢なら百本、薬草なら千束を一枠にできる。だが上位冒険者は無限鞄を持ち、彼を「数えるしか能のない木偶」と呼んだ。

【固有スキル《同名収納》:登録した呼称と同じ名で認識される対象を、一件の品目として一括格納する】

生物は入らないと鑑定官は決めつけた。イグナートも試したことはない。荷役として迷宮主討伐隊へ同行したのは、戦利品を運ばせるためだった。

道中、彼は折れた矢を種類別に分け、残りの薬を数え、誰より早く不足を知らせた。隊長はその報告を無視したくせに、功績表には自分が補給を管理したと記した。

最下層で待っていたのは、一体の魔獣ではなかった。

召喚師が床へ血を流すと、壁、天井、仲間の影から黒い猟犬が湧いた。斬れば二つに増え、焼けば煙から戻る。百、千、一万。通路は牙で埋まり、退路も消えた。

隊長はイグナートの背へ短剣を当てた。

「餌になれ。お前が食われている間に転移石を使う」

その隊長こそ、報酬を独占するため召喚師と通じていた。

黒犬たちは荷役の男を囲む。召喚師が愉快そうに告げた。

「無駄だ。こいつらは個体ではない。魔界にいる一匹の《夜喰らい》を、無数の影へ写したものだ」

イグナートは笑った。

一匹を倒せないなら絶望だ。だが無数に見えるものが全部、同じ名で認識される一品目なら、彼ほど相性のよい者はいない。

登録する呼称は、今、所有者自身が教えてくれた。

イグナートは迫る牙へ片手を向けた。

「品目登録――夜喰らい」

一度の収納で、迷宮から黒が消えた。

一万の影も、魔界に残る本体も、同名の対象として一枠へ束ねられる。召喚契約の向こう側まで空になり、召喚師の腕から魔獣印が剥がれた。

隊長の短剣が床へ落ちる。

救われた冒険者たちは、今度は彼の退路を塞いだ。イグナートの粗末な荷役札に、迷宮そのものが新しい名を刻む。

【職業が《迷宮荷役》から《真名収監王》へ書き換わりました】