『十七分間の保守記録』

試用期間終了面談で、開発責任者は採用取消通知を読み上げた。

理由は一か月前のシステム停止。新人が保守設定を誤り、十七分間サービスを止めたという。

「重大事故だ。正社員登用はできない」

新人は、設定画面に触れていないと主張した。しかし責任者は、本人のアカウントで変更された記録を示した。

人事担当が確認のため、退職した保守責任者のファイルを開いた。ファイル名は「十七分.zip」。パスワード欄には「第三会議室の予約名」とだけ書かれていた。

開発責任者は笑った。

「辞めた人間の謎解きに付き合うのか」

人事担当が事故当日の予定表を調べると、第三会議室は「停電試験」という名で予約されていた。それがパスワードだった。

圧縮ファイルの中には、保守設定の操作記録が一秒単位で保存されていた。新人のアカウントで安全装置が解除されている。だが同じ時刻、新人は採用研修で別棟の会議室にいた。研修の出席記録と入館履歴が一致していた。

責任者は「パスワードを誰かに教えたのだろう」と言った。

退職者の記録には、操作端末の番号もある。責任者室の専用端末だった。起動には責任者のカードと顔認証が必要で、新人のアカウントはその後に入力されていた。

「検証のため代理操作した。事故は新人の設定値が悪かったからだ」

人事担当は、ファイル内の画像を開いた。事故直前の設定値は正常。責任者が安全装置を解除し、停止後に元へ戻している。さらに、停止中の十七分間だけ監視通知の宛先が退職者から外されていた。

「なぜ、わざと停止させたんですか」

責任者は答えなかった。

退職者のメモには推測が一行だけ残っていた。

――事故対応の実績がなければ、次期本部長の推薦条件を満たせない。

責任者は停止を起こし、自分で復旧した英雄になるつもりだった。新人は責任を負わせやすい仮採用者だった。

人事担当は採用取消通知を二つに折った。

「正社員登用を承認します」

新人の社員番号が正式登録へ変わる。

「同時に、本部長推薦を取り消し、操作権限を停止します」

責任者の端末から、保守画面が消えた。