カーテン係の特権
窓際の後ろになった人は、カーテン係になる。
正式な決まりではない。先生が「まぶしかったら閉めて」と言うたび、いちばん近い人が動く。それが積み重なって係になる。
今回、その席を引いたのは僕だった。
隣は、昼休みになると必ず机に伏せる子。授業中は元気なのに、午後だけ頭痛がするらしい。西日が入る時間、彼女は眉間にしわを寄せていた。
僕は何も言わず、カーテンを半分閉めた。
「暗くない?」
「僕が眠いから」
本当のことを言うと気を遣わせそうで、そう答えた。
次の日も、その次の日も、五時間目になると閉めた。先生には「まだ明るい」と開けられ、また少し閉めた。彼女はいつの間にか、僕の机へ小さな飴を一つ置くようになった。
「通行料?」
「遮光料」
僕らはそれ以上話さなかった。
ある日、僕が風邪で休んだ。翌日登校すると、彼女は机に伏せたまま言った。
「昨日、まぶしかった」
「自分で閉めればいいのに」
「先生に開けられた」
「また閉めれば」
「一人だと反抗みたいで嫌」
僕がやっていることも、十分反抗だった。二人だと係に見えるらしい。
その日の五時間目、先生がカーテンを開けようとしたとき、彼女が先に手を上げた。
「光で頭が痛くなるので、半分閉めてもいいですか」
教室が少し静かになった。先生はすぐに「もちろん」と言った。
彼女はカーテンを引き、席へ戻った。僕の机に飴を置かなかった。
「今日の分は?」
「もう自分で払った」
そう言って笑った。
席替えの最終日、放課後の教室でカーテンを外して洗うことになった。二人で窓際に立つと、西日がまともに顔へ当たった。
「こんなに明るかったんだ」
彼女が目を細めた。
僕はカーテンを持ち上げ、即席の日陰を作った。
「最後の特権」
「誰の?」
「係の」
彼女は日陰へ入り、僕の隣に立った。
次の席替えで、僕は廊下側、彼女は教卓の前になった。カーテンからいちばん遠い。
それでも午後、彼女は自分で先生に声をかけた。
半分だけ閉じられた教室で、僕は誰にも見つからないよう飴を一つ食べた。甘さは、遮光料として受け取っていたものと同じだった。