レベルゼロの追放者

斎槻ナオミは巨兵の拳を受け、レベル三からゼロへ落ちた。

《経験値障壁》

受けたダメージを無効化し、同量の経験値を失います。

失った経験値は所有履歴からも消えます。

「もう役に立たない。除名だ」

団長は新人四人を盾として前列へ置き、レベルゼロになった順にギルドから切った。自分たちは無傷で巨兵の後ろへ回り、宝箱を狙う。

ナオミの装備はすべてレベル条件を失って外れた。残ったのは初期服だけ。

巨兵の背後に、白い門がある。

《通過条件:経験値を一度も所有していない者》

レベル一では開かない。経験値ゼロでも、過去に得た履歴があれば不適格――そう思ったが、障壁で失った経験値は《返却済み》と記録されている。システム上、ナオミは一度も所有していない状態へ戻っていた。

他の追放者三人と門へ触れる。白い扉が開く。

中には巨兵の制御核と、開始村へつながる避難路があった。巨兵は宝箱を守るボスではなく、経験値を持たない初心者を高レベル攻略者から隔離する守護機だった。

団長が通信で命じる。

「核を止めろ。報酬を分けてやる」

ナオミは停止ではなく《保護対象追加》を押し、まだ前列で経験値を奪われている新人を全員登録した。

巨兵が振り向き、団長たちへ進む。彼らの攻撃は経験値障壁で無効化されるが、膨大なレベルが一撃ごとに削られていく。

《巨兵討伐失敗》

《保護対象:レベルゼロの追放者》

白い門の先には、戦闘を知らないNPCの子供たちもいた。高レベル者が経験値稼ぎのため区域へ入り、守護機をボス扱いしていたのだ。

ナオミたちが失ったレベルは戻らない。覚えた技能も装備条件も消えた。それでも彼女は、経験を奪われた自分を空っぽとは思わなかった。前列で誰が泣き、誰が団長の命令に震えていたかは覚えている。

避難路の入口へ、新しい看板を立てる。

《レベルゼロ歓迎。盾役募集ではありません》

巨兵はその文字を認証し、初めて武器を地面へ置いた。

《初心者区域を再設定――経験を失った者は役立たずではなく、強者に消費されないため最初の場所へ帰る資格を得ました》