九号のハンガー

つぐみが発注した制服は、九号が二十着届いた。

必要だったのは、九号二着と、十一号八着、十三号十着だった。

新規開店するアパレル店のスタッフ用制服。表計算の数量欄をコピーしたとき、最初の行が全サイズへ反映されていた。箱を開けた店長が、同じタグの列を見て黙った。

交換はできる。ただし開店日に全員分が揃わない。仮の服を手配し、配送費も追加になる。

つぐみは倉庫の隅で、九号のジャケットを一着つかんだ。

仕事で失敗すると、自分が着られない服を試す癖がある。ボタンが閉まらない、肩が合わない、それを確かめてから「だから私は何をしてもだめだ」と結論づける。発注ミスと身体には関係がないのに、責める材料は多いほど落ち着いた。

試着室へ向かいかけて、足を止めた。

ジャケットをハンガーへ戻す。タグの九という数字は、つぐみを測るために付いているのではない。今日、間違えて二十回発注されたサイズを示しているだけだ。

店長へ、交換可能数と最短納期を報告する。仮制服は在庫の黒シャツで統一することになった。つぐみはスタッフ全員に事情を書いたメッセージを送り、必要サイズをもう一度回答してもらった。返信が来るたび、胸が縮んだ。

一人から《初日は黒シャツ了解です》と返ってきた。慰めの言葉ではない。だからこそ、つぐみはそのまま受け取れた。誰も発注表の誤りと、つぐみの体型を結びつけてはいなかった。結びつけてきたのは、いつも自分だけだった。返信欄に長い弁解を書かず、了解のスタンプだけ返した。

夜、返品用の箱を閉じる。九号のハンガーが一本だけ余り、つぐみは正しい札へ付け替えた。

試着室の鏡はカーテンの隙間から見えていたが、近づかなかった。

発注表のセルには、サイズごとに違う数字が並んだ。開店日の問題はまだ残っている。店長から注意も受けるだろう。

それでもつぐみは、自分の身体を追加の不良品に数えなかった。

倉庫を出る前、黒い仮制服を自分の分も一着取った。ラベルは十一号。鏡で確かめず、ほかのスタッフと同じ箱へ入れた。