信頼度ゼロの相棒

砂鐘ルカンの背後で、相棒《ミッドナイト》が黒剣を抜いた。

《信頼反撃》

味方から受けるダメージは、対象が攻撃者へ抱く信頼度%だけ増幅されます。

現在信頼度:100。

二年間、ミッドナイトはルカンを庇い、回復し、秘密を守った。だから一撃で殺せる。

「振り向くな」

優しい声だった。

ルカンは前方のボスへ剣を向けたまま、信頼度表示を見る。百のまま。

「最初からPKだったのか」

「最初は違った。お前の所持品に帰還鍵があると知るまでは」

嘘ではない。だから余計に痛い。

ミッドナイトは剣を振り上げる。

ルカンは「信じない」と口にした。数字は変わらない。信頼度は言葉ではなく、本人の認識で決まる。

背中に刃の気配。

ルカンは二年間を思い返す。救われた夜。笑った朝。今の告白一つで全部が偽物になるわけではない。だから信頼を捨てられない。

ミッドナイトもそれを知っている。

「お前は優しい。最後まで俺を信じる」

刃が下りる。

その瞬間、ルカンは理解した。過去の相棒を信じることと、今の攻撃者へ命を預けることは同じではない。

《信頼度:100→0》

黒剣は背中へ触れ、ダメージゼロで止まった。

ミッドナイトが目を見開く。

ルカンは振り返り、攻撃せずに帰還鍵を握る。

「二年間は本物だった。だから、今のあんたが戻るまで信用しない」

警備ボスがPK行動を検知し、ミッドナイトを拘束する。

《信頼反撃ダメージ倍率:0%》

《対象の信頼度ゼロを確認》

拘束されたミッドナイトは、ルカンの信頼度が本当にゼロなのか何度も確認した。

「二年全部、消えたのか」

「消してないからゼロになった」

偽りだったと決めつければ、憎しみへ変わり、まだ相手を中心に生きることになる。ルカンは過去を過去として残し、今の判断だけを切り離した。

帰還鍵は一人用だった。ミッドナイトが欲しがった理由も、現実に病気の弟がいるからだと後で分かる。

ルカンは鍵を渡さない。代わりに警備へ事情を話し、別の帰還経路を探すと約束する。

信頼ゼロは、相手を見捨てる数値ではない。何をしても許される権利を一度取り上げるための距離だった。

《関係破綻ではありません――過去を否定せず、現在の刃へだけ信頼を渡さなかった自己防衛です》