八本目の象毛
赤土の砦前で、ンゴマ・セベは相手の腕輪を数えていた。
象の尾毛を七本、銅糸で束ねた輪。王の槍守だけが着ける印だった。主を追われた今も、ンゴマは外していない。七本は、王の周囲に立った七人を示す。内乱の夜、生き残ったのはンゴマとバクルだけだった。王の寝所へ敵を入れた者がいる。証拠はなく、二人は互いの名を泥へ書いてきた。腕輪を外せば疑いから逃げられたが、外した方が王を忘れたと見られる。七本の毛は忠義の印ではなく、逃げ道を塞ぐ縄になっていた。
向かいのバクル・タネも同じ腕輪を着けていた。ただし毛が八本あった。
「数を忘れたか」
ンゴマが聞くと、バクルは槍を構えた。
「一本多い方が、忠義も多い」
二人は別々の内乱で主を失い、辺境王の兵になろうとしていた。雇う槍頭は一人。辺境王は明朝、反乱軍の象隊を迎え撃つ。槍頭は最初の象へ走り、目の前で隊列を割らねばならない。勝っても長生きできる役ではない。それでも敗者は、王殺しの噂だけを背負って砦を去る。城壁の兵は二人の名を知っていた。太鼓が鳴る前から、どちらへ石を投げるか決めている顔だった。砦門の前、円形に撒かれた白灰から足を出した方が負けだった。
太鼓が一度鳴る。
バクルの槍は長く、穂先に毒が塗られているという噂があった。ンゴマは間を詰めず、腕輪だけを見た。
八本目は象毛ではなかった。風が吹いても曲がらない。細い鉄針を黒く染め、毛の束へ隠している。
バクルが槍を突く。ンゴマは石突きで受け、わざと左腕を近づけた。
バクルの口が歪む。槍を捨てるように片手を離し、腕輪の針をンゴマの脈へ刺そうとした。
ンゴマは待っていた。
槍の柄を横へ滑らせ、バクルの手首と胸の間へ差し込む。そのまま捻ると、隠し針ごと腕が外へ開いた。ンゴマの穂先が喉元へ止まり、バクルの踵が白灰の外へ落ちた。
太鼓が二度鳴った。
ンゴマは八本目の鉄針を抜き、赤土へ刺した。先端に塗られた黒い樹脂へ蟻が触れ、すぐ丸まった。
「王の槍守は七人だった」
ンゴマは言った。
「八人目は、いつも王を殺す側にいる」
辺境王はバクルを見ず、門番へ槍を倒した。
棘木の城門が左右へ開いた。