午前零時のプリン

家族に隠し事はよくない。

そう教えている私が、午前零時になると冷蔵庫を開け、息子の名前が書かれた高級プリンを少しずつ食べていた。

受験生の息子は夜食用に買ったと言うが、三日も手をつけない。賞味期限を守るのも母の役目である。毎晩ひと口だけなら、見た目では分からない。そう信じていた。

四日目、冷蔵庫を開けた瞬間、換気扇も時計も、寝室から聞こえる夫のいびきも止まった。

扉を開けているあいだ、私だけが動けた。

プリンの蓋には、息子の字で「母へ」と書き足されていた。

その下に付箋が三枚重なっている。

一枚目は夫。

「誕生日に渡す予定。食べるな」

二枚目は娘。

「お父さんへ。お母さん、もう毎晩食べてる」

三枚目は息子。

「全員へ。気づいてた。追加を買ったので、今夜台所集合」

冷蔵庫の奥を見ると、同じプリンが四つ並んでいた。

しかも私が盗み食いしていた容器の底には、透明なスプーンが一本、横向きに沈んでいる。ひと口ずつ減らしていたつもりで、実は最初から半分しか入っていない冗談用の容器だった。

寝室へ行くと、夫は寝たふりの顔で固まっていた。口元が笑っている。

廊下では娘がクラッカーを構え、息子はろうそく一本を持っている。三人とも、私が冷蔵庫を開ける音を待っていたのだ。

私は台所へ戻り、扉を閉めた。

時間が動き、いびきが不自然に再開する。

「皆さん、起きてください」

返事はない。

「プリン泥棒を現行犯で捕まえました」

三つの扉がほぼ同時に開いた。

娘のクラッカーは不発だった。夫はろうそくを落とし、息子は笑いすぎてしゃがみ込んだ。

私は四つのプリンを並べ、自分の分を確保してから言った。

「家族に隠し事はよくありません」

「お母さんが言う?」

「母には賞味期限を守る義務があります」

誕生日は二日前に過ぎていた。

皆が忙しく、私自身も忘れていたらしい。

豪華な贈り物も歌もなかった。ただ午前零時の台所で、四人が同じプリンを食べた。

冷蔵庫の扉をもう一度開けても、時間は止まらなかった。

今度は誰の名前も書かれていない最後の一個があったので、私は堂々と蓋を開けた。