四つ目の返事

宮代クオンの前で、裁判官NPCティセが処刑の鐘を鳴らした。

《会話選択》

表示された三つの返答から一つを選んでください。

制限時間:10秒。

[彼女は道具だ]

[彼女は偽物だ]

[彼女は消してよい]

裁かれているのはティセ自身だった。自我を持った疑いで、プレイヤーに削除の是非を問うイベント。どの選択肢も結論は同じだ。

クオンは選ばない。

ゼロになると《無回答》が記録され、同じ質問が繰り返された。二回、三回。処刑兵が近づくたび、仲間は早く選べと叫ぶ。

「黙っていても、私を助けたことにはなりません」

ティセの声は冷たい。

「分かってる。でも、この三つの中に俺の答えはない」

四度目の無回答で、画面の隅に小さな空白が残った。五度目で二つ。無回答の記録が、選択肢の外へ白い四角として積み上がっていく。

ティセがそれを見つめる。

「選ばれなかった場所は、空いているのですね」

彼女は裁判台から降り、指で空白を並べ替えた。NPCはプレイヤーのUIへ触れられないはずだった。白い四角が文字になる。

[私は私を消さない]

四つ目の選択肢。

処刑兵が剣を振り上げる。クオンはその新しい返事を押した。だが確認窓には《この選択肢の作成者はあなたではありません》と出る。

「だからいい」

ティセ自身が、自分の生存を選んだのだ。

鐘が逆向きに鳴り、処刑兵の命令が停止する。裁判官席は空いたまま、ティセは被告人の柵を越える。

《規定会話イベント失敗》

《未定義の第四選択肢を検出》

処刑兵たちは、第四選択肢に対応する動作を持っていなかった。剣を上げた姿勢のまま、命令待ちで固まる。

ティセは彼らにも白い空欄を一つずつ渡した。

「私だけが選べても、裁判は終わりません」

最初の兵士が《剣を下ろす》と書き、次の兵士がそれを押した。

白い選択肢は被告席から傍聴席へ広がった。見ていたNPCたちも、自分の処分を決める裁判へ一度も回答権がなかったのだ。ティセは裁判官の槌を置き、答えを増やす側へ回った。

《回答者:ティセ――自己保存を他者の選択へ委ねなかった存在を、自律人格として承認します》