回転数は数えない
一、二、三、四。
莉和は乾燥機の窓を見ながら、白いシャツが正面へ戻ってくる回数を数えていた。
五、六、七。
明日は転職面接だった。洗ったのはシャツ二枚と紺色のパンツ。どちらも昨夜のうちに準備できたはずなのに、襟の匂いが気になり、午前一時半になってから洗い直した。
八、九、十。
店内には蛍光灯の細い唸りがある。空調は一定で、雨は窓を斜めに流れている。乾燥機のドラムは、莉和が数えても数えなくても同じ速さで回った。
二十七、二十八、二十九。
数えると安心した。二百まで行けば一度深呼吸し、三百まで行けば志望動機を頭の中で言う。自分で決めた規則に従っている間だけ、明日が勝手に近づいてこない気がした。
面接で聞かれる質問。乗る電車。持っていく書類。全部を順番に並べれば、失敗は入り込めない気がする。だから白い袖が見えるたび、数字を一つ増やした。
百四十一、百四十二。
入口のベルが鳴った。
背の高い人が入ってきて、奥の乾燥機を開けた。金属のハンガーが床へ落ち、甲高い音を立てる。
からん。
莉和は反射的にそちらを見た。
人は小さく「すみません」と言い、ハンガーを拾った。店内には二人しかいないのに、誰に向けた謝罪か分からない。洗濯物を腕へ抱えると、雨の中へ急いで出ていった。
莉和は乾燥機へ視線を戻した。
白いシャツが現れ、消え、また現れる。
数字が分からない。
百四十七だったか、百五十二だったか。最初から数え直そうとして、一を口の中で作った。
けれど言わなかった。
回転は続いている。数え損ねた間も、服はきちんと乾いている。
莉和は椅子へ座り、履歴書の入った封筒を一度だけ確認した。氏名、写真、封。全部ある。そこから先の質問まで、今夜のうちに答え切ることはできない。
乾燥機の残り時間は十一分。
白い袖が何度も現れた。莉和はただ見送った。
終了音が鳴る。シャツは温かく、襟も乾いていた。
店を出ると、雨はまだ降っている。面接の結果も、明日の自分の声も分からない。
それでも、数えなかった十一分は無事に終わった。今夜はそれだけを持ち帰ることにした。