坑道の息

鉱山支援魔術師ソグナは、火球を撃てなかった。

できるのは坑道の奥へ細い風を送り、古い空気を外へ押し出すことだけ。鉱山長ドーベルは新しい送風機を導入すると、彼を解雇した。

「歯車は休まず働く。魔術師へ高い日当を払う時代は終わりだ」

翌朝、送風機が唸り、採掘班は最深部へ入った。

最初の一時間は問題なかった。二時間目、先頭の油灯が青くなった。三時間目、若い鉱夫がつるはしを落とした。

「怠けるな」

監督が肩を掴んだ直後、自分も膝をついた。

灯りが一つずつ消え、坑道の奥から咳が連なった。送風機は動いているのに、空気は入口近くで渦を巻くだけで、曲がりくねった最深部まで届いていない。

救助班は送風機の音を頼りに進んだが、奥ほど息苦しくなって引き返した。結局、坑夫たちは掘削用の小穴を自分たちで広げ、泥だらけになって這い出した。採れた鉱石は一籠もなく、その日の利益は止められなかった送風機の燃料代だけ赤字になった。

図面を広げた技師が顔色を失う。

「ソグナ殿は風を送っていたんじゃない。人のいる場所ごとに流れを分け、使い終えた空気を別の穴から戻していたんだ」

救出された鉱夫たちは、地上で初めて彼の仕事を知った。

誰も風を見たことがなかった。ただ、息ができることを当然だと思っていた。

そのころソグナは、王都地下工事隊で崩落した排水路へ潜っていた。

支援術で新鮮な空気の道を作ると、閉じ込められた三人が自力で歩いて出てきた。主任技師エメルは彼の肩を強く叩く。

「掘る者は多い。帰り道の息まで用意できる者は一人しかいない」

助け出された三人の家族は、ソグナへ金貨ではなく、毎朝焼くパンを一月分届けると約束した。工事隊は彼の風路を新しい設計基準に採用し、図面の署名欄を最上段に変えた。

その場で地下安全監督の任命状が渡された。

夕暮れ、煤だらけの鉱山使者が到着した。

「日当を三倍にする。送風機の責任者として戻ってほしい」

ソグナは任命状を筒へ収めた。

「鉱山との労働契約は、解雇を言い渡された時点で終了しています」