墓石は展示品です

 月のない夜、墓地の端で三人が同じ墓石を囲んだ。

 マフィアの真鶴ジョルジョは、裏帳簿を墓の下へ隠した部下から「鶴の彫刻が目印」と聞いていた。

 刑事の百目鬼巌は、その受け渡しを張り込んでいた。

 墓荒らしの渚鳥鈴鹿は、古い名家の副葬品を狙っていた。

「掘るのか」

 ジョルジョが尋ねる。

「そのつもり」と鈴鹿。

「何が出る」と巌。

「紙の束」とジョルジョ。

「金目のもの」と鈴鹿。

「証拠」と巌。

 三人は同じ物を別の言葉で呼んでいると思った。

 鈴鹿が小型のスコップを出す。

「深さは?」

「三十センチ」とジョルジョ。

「浅いですね」と巌。

「急いで埋めたからな」

「誰を?」

「帳簿だ」

「人名ですか?」

「紙だと言っている」

 鈴鹿は墓石の裏を調べた。

「骨は邪魔なら横へよけます」

「遺骨損壊まで予定しているのか」と巌。

「仕事ですから」

「堂々と言うな」

「あなたも見張り役でしょう?」

「警察だ」

 巌が警察手帳を見せる。

 ジョルジョは墓石の陰へ手を入れ、鈴鹿は逃げ道を探した。

「待て。警察が一人で来るはずがない」とジョルジョ。

「応援は近くにいます」

「近くとは、あの白い車か」

「霊柩車?」と鈴鹿。

「覆面車です」

「覆面にしては社名が大きい」

 白い車には《霜月石材》と書かれていた。

 やがて作業着の霜月寅吉が懐中電灯を振りながら走ってきた。

「そこで何してるんです! 夜中に商品を掘らないでください!」

「商品?」

 寅吉が墓石の根元を照らす。地面ではなく、厚いコンクリート台の上に人工芝が敷かれていた。周囲にも新品の墓石が値札つきで並ぶ。

「ここは墓地じゃなく、石材店の展示場です。墓地は塀の向こう」

 ジョルジョは鶴の彫刻を見上げた。

「同じ目印が多すぎる」

「人気商品ですから」

 巌は二人へ手錠を出した。

「帳簿は見つかりませんでしたが、墓荒らしと不法侵入は見つかりました」

 鈴鹿が肩を落とす。

「せめて墓へ入る前に捕まりたかった」

「まだ誰も入っていません」