旅券を返す朝

空港の写真で、私は今年の旅行を知った。

毎年、大学時代の四人で行くのに、泉美たちは私へ日程さえ知らせなかった。

私は旅行係として、全員の旅券コピーをクラウドに保存している。紛失時に必要だからだ。血液型、保険番号、家族の連絡先も一冊にまとめ、出発前には私へ更新箇所を申告させていた。三人は冗談で「入国審査より厳しい」と言ったが、事故が起きてからでは遅い。写真を拡大すると、泉美の新しい表紙だけ色が違った。更新したことまで隠していた。

さらに、三人の手には別々の財布があった。以前は盗難防止のため私が現金とカードをまとめ、必要な分だけ渡していた。毎晩レシートを照合し、無駄遣いした子の翌日分を減らす。旅先で喧嘩しないための公平な方法だった。海外で自由行動など、危険すぎる。

帰国日の到着口で待つと、泉美は私を見て立ち止まった。三人は同じ便なのに少し離れて歩き、誰も私へ荷物を預けなかった。私はいつものように四人分の名札を用意してきたが、泉美は受け取らず、空港警備員の近くへ移動した。

「どうして便が分かったの」

「親友なら分かるよ」

前の旅行で、泉美は二日目に帰りたいと言い出した。過呼吸で判断力が落ちていたから、旅券をホテルの金庫へ移し、カードも預かった。航空会社へ変更を断ったのは、落ち着けば感謝すると思ったからだ。部屋の内鍵に椅子を置いたのも、夜中に外へ出て迷わないようにするためだった。泉美は部屋から出なくなったが、私が食事を選んで運んだ。

三人は、あれを監禁だったと言った。

今回は旅行ではなく、あの時の記録をそろえて相談機関へ渡すため、同じ国へ行ったらしい。私を外したのは、泉美が自分で帰る練習をするためだった。

「もう旅券も予定も預けない」

泉美は差し出した封筒に、連絡を拒む文書を入れていた。

三人はそれぞれ自分の荷物を持ち、私を置いて歩き出した。

私は投稿された搭乗券の写真をもう一度拡大した。

端に写った泉美の新しい旅券番号は、十分読めた。