村人は全員嘘をつく

山村の観光案内所で、謎解き参加者四人へ一枚の紙が渡された。

〈この村の村人は全員嘘をつく。真実を語る者を見つけよ〉

四人は腕章を付け、村へ散った。

最初に会った農家の男性へ尋ねる。

「駅はどちらですか」

「まっすぐだよ」

参加者は相談した。

「全員嘘なら、まっすぐではない」

「逆方向へ行こう」

十分後、行き止まりの畑に着いた。

「やはり高度な嘘だ」

「正しい道を言うことで、ルール自体を疑わせる二重の嘘」

「普通に駅の方向だった可能性は?」

「村を信じるの?」

次に八百屋の女性へ聞く。

「今日は火曜日ですか」

「火曜日ですよ」

実際に火曜日だった。

「曜日まで偽装している」

「カレンダーを村全体で操作?」

「スマートフォンの日付も?」

「通信基地局が村側かもしれない」

「観光謎解きに国家予算を使うな」

四人は誰の言葉も信じなくなった。

「昼食は食堂がおすすめ」

「罠だ」

「橋は工事中だから渡れない」

「渡れる」

「熊が出るから山へ入るな」

「山が正解ルート!」

案内所の職員が必死に止める。

「その忠告は本当です!」

「真実を語る者を見つけた?」

「いや、職員も村人」

「なら嘘だ」

四人が山道へ向かおうとしたため、職員は謎解きを中断した。

「紙を裏返してください!」

裏面には小さな盤面が印刷され、赤と青の人型コマが並んでいた。

〈盤上の村人は全員嘘をつく。質問カードを使い、正直者である旅人コマを特定せよ〉

職員が説明する。

「“村人”とは、このボードゲームのコマです。実際の住民へ質問する企画ではありません」

参加者たちは紙を見た。

「では農家の人は?」

「親切に道を教えただけです」

「八百屋さんは?」

「今日が火曜日だから火曜日と言いました」

遠くで農家の男性が叫んだ。

「熊は本当に出るぞ!」

案内所へ戻ると、八百屋の女性が地図を持って待っていた。

「だから駅はまっすぐだと言ったでしょう」

参加者の一人が頭を下げる。

「疑ってすみません」

「うちの大根は甘いよ」

四人は一瞬だけ顔を見合わせた。

職員が叫ぶ。

「それも本当です!」

四人は今度だけ、村人の言葉を信じて全力で戻った。