永遠の夜に終業の鐘を
鐘撞きクグイは、三十年間、時刻どおりに鐘を鳴らした。
夜明け、昼、日暮れ、門限。戦士のように魔物を倒せず、魔術師のように天候も変えられない。若い領主は「紐を引くだけの老人に給金はいらぬ」と鐘楼の鍵を取り上げた。
クグイの技能も、町の予定表にしか効かないと思われていた。
【職業技能《終刻》:開始を正式に告げられた事柄一つへ、終了を告げる鐘を鳴らす。】
その夜、吸血公が町を占領した。
公は広場で杯を掲げ、高らかに宣言した。
「これより永遠の夜宴を始める。朝は二度と来ない」
空から星が消え、月が赤く固定された。住民は家へ閉じ込められ、毎夜一人ずつ宴の料理として連れ去られる。聖騎士が公を斬っても、夜が続く限り傷は瞬時に戻った。
百日目、最後に残った子どもたちが広場へ並べられた。
吸血公は、鐘楼の下でクグイを見つけて笑った。
「時を告げる鐘はもう不要だ。余の夜には終わりがない」
「始まりは、あなた自身が告げました」
クグイは隠していた古い鍵を取り出した。取り上げられたのは鐘楼の新しい鍵だけだ。三十年前から使う裏階段の錠前までは、領主も知らなかった。
老人は百段を上り、埃をかぶった大鐘の綱を握る。
夜明けを呼ぶ必要はない。
魔法を破る必要もない。
始まった宴を、終わらせればよい。
最初の一打が町を揺らした。
「永遠の夜宴、終業」
赤い月に亀裂が入る。二打目で星が戻り、三打目で東の空が白んだ。
吸血公は広場から逃げようとしたが、宴の主催者は終了まで席を離れられない。椅子へ縫い止められたまま朝日を浴び、悲鳴とともに灰になった。
子どもたちの顔へ、百日ぶりの光が差す。
鐘の下では、クグイを解雇した領主が土下座していた。老人は予定表へ新しい時刻を書き加える。
――圧政終了、日の出と同時。
朝日を浴びた町では、止まっていた時計が一斉に動き出した。パン窯へ火が入り、閉じていた店の戸が開く。クグイの鐘は勝利を誇るようには鳴らず、いつもの朝と同じ回数だけ響いた。その平凡な音こそ、住民が百日待ち続けたものだった。
【職業《鐘撞き》が上位職《時代終鐘師》へ書き換わりました。】