潮番のくじ

海竜に港を焼かれた岬村の漁師たちが、内湾の真珠浜へ避難した。

舟は残った。だが真珠浜の船着き場は狭く、潮の良い時間に出られるのは十二艘だけだ。

「岬の連中は沖漁が得意だ。全部持っていかれる」

浜の漁師たちは綱を張った。

代官クレフは綱を切らず、十二枚の貝札を桶へ入れた。

抽選はクレフの執務室ではなく、競り場で子どもにも見えるよう行う。桶を回す役は毎日交代し、札を引いた順と実際の出航時刻を同じ板へ残す。

「毎夕、翌朝の出航順を抽選する。一家一枚。真珠浜も岬村も同じ桶だ。救難用の一枠は空けておく」

漁獲は三籠まで各家のもの。四籠目から十二分の一を桟橋拡張と救難船の油へ。数量と使途は競り場の壁に書く。文字を読めない漁師にも分かるよう、魚籠と板材の絵も添えた。外れた舟は昼潮の枠か、網修繕場を無料で使える。抽選に外れたこと自体で港の居住権を失うことはない。

初日の一番札は岬村の若い漁師だった。

浜の古老は舌打ちしたが、その朝、沖で浜の小舟が帆柱を折った。

一番札の舟は漁場へ向かわず、救難枠の舟と並んで引き返した。裂けた帆を自分たちの予備布で縛り、浜の小舟を浅瀬まで曳いた。帰りが遅れたため朝の好漁場はもう空だった。岬の漁師は焼けた港で何度も救助をした者たちだった。

帰港後、魚籠は空だった。それでもクレフは一番札を返させない。

「救助した日は、次の抽選札を一枚追加する」

規則板の末尾を指す。最初から書かれていた。

助けられた古老は、翌日、抽選桶を自分の手で回し、自分の四籠目から魚を納めた。

「油代だ。借りを返すんじゃない。次に誰かが助かる分だ」

納められた魚は売られ、木材になった。岬の船大工が設計し、浜の若者が杭を打つ。命令はなくても、船着き場は海へ一間ずつ伸びた。

完成の日、古老は新しい係留柱へ岬の舟を招いた。

柱の頂には、二つの浜で拾った貝殻が埋め込まれている。

夕潮が満ちると、十二枚だった貝札の桶へ、クレフは十三枚目を落とした。

乾いた音が一つ鳴り、新しい出航枠が生まれた。