眠る子の前に立つ不死者

暗殺者クナイドが窓から入ったとき、子供部屋ではホノが眠っていた。

寝台の前に立つシルヴェは、百年前と変わらない青年の姿で、毛布の端を直している。武器はない。

「その子は王家最後の血だ。退け」

「寝たばかりです。静かにしてください」

侮られたと感じたクナイドは、指の間から三本の黒針を放った。一本は喉、二本は心臓。避ければ背後の子供へ届く角度だ。

シルヴェは片手を毛布へ添えたまま動かなかった。

針は彼の身体へ届く直前、急に重さを失ったように床へ落ちた。ホノは寝返りを打っただけで、目を覚まさない。

「重力術か」

暗殺者は自分を納得させ、切り札の無音爆弾を取り出した。部屋全体から空気を奪い、内側にいる生物の肺を潰す。身のこなしでは避けられない。

黒い球が破裂し、壁紙と玩具を巻き上げる煙が部屋を満たした。

煙が晴れる。

シルヴェは毛布へ手を添えた同じ姿勢だった。燭台の火さえ彼の背後だけは消えず、ホノの寝息も一定のまま続いている。爆風は寝台を中心に二つへ裂け、両側の壁だけを破壊していた。

崩れた壁から月光が差し、古い肖像画を照らした。そこには幼い先王、その父、そのまた母の寝台脇にも、同じ顔のシルヴェが描かれている。王家が代替わりするたび、彼は子供が眠れる夜だけを守ってきた。暗殺者の依頼書にある『王家最後の盾』とは、城壁ではなく彼のことだった。ホノは眠ったままシルヴェの指を握った。その小さな仕草だけで、依頼書に書かれた「抹消対象」は王位継承者ではなく、ただ守られて眠る子供へ戻った。

クナイドが異常に気づいたのは、狙いを定めるたび、自分の視線が子供と青年の輪郭から滑り落ちることだった。目も針も爆風も、彼らを敵として捉え続けられない。

「どういう魔法だ」

「敵意を迷子にするだけです」

シルヴェは声を落とした。

「私は死にません。でも、この子は起こしたくない」

ホノが安心したように毛布を握る。

暗殺者は次の武器へ手を伸ばせず、音を立てないよう一歩退いた。