積めない最後の一台
家具倉庫の夜勤で、賀来井直に与えられた仕事は単純だった。地方の新店舗へ送る什器を、一台のトラックへ積み切る。それだけだ。
ところが午前二時、最後のパレットが荷台の前で止まった。残った空間は十センチ足りない。配車係は二台目を出せないと言い、主任は上段の軽い照明箱を横倒しにするよう命じた。
直は荷台へ上がり、奥から順に荷札を見た。積付け図では、重い陳列台を前、軽い椅子を後ろに置く。だが現物は図面どおりなのに、後輪側が沈みすぎていた。陳列台の一つが仕様変更され、重量だけが古いままだったのだ。
「横倒しにすれば入るだろ」
「入っても、軸重を超えます」
最後の一枚を押し込むことだけ考えれば、トラックは出せる。けれど高速道路の検査で止まるか、急制動で後ろが振られる。直は荷物を減らさず、順番を組み直した。荷台の長さだけでなく、床に引いた目盛りと車体の沈みを一列ごとに記録し、移すたびに重心がどちらへ寄ったかを確かめた。
まず奥の軽い椅子を一列だけ下ろす。重い陳列台を荷台の中央へ移し、椅子をその隙間へ差し込む。照明箱は倒さず、脚部の空洞へ小箱を収めた。空間を埋めるためではなく、重量を前後へ散らすための配置だった。
主任が時計を叩く。
「積み直しで三十分遅れるぞ」
直は最後のパレットのラップを指した。片側だけ十センチ張り出している。箱が大きいのではなく、空の角当てが外へ曲がっていた。ラップを切らず、熱で縮める器具も使わず、外側の保護板だけを正しい位置へ戻す。幅は八センチ減った。
最後のパレットが収まったあと、直は車体の目盛りを左右で確認した。扉が閉まることだけを『載った』とは呼ばなかった。沈みは均等だった。運転手も荷台を一周し、ラッシングを増やした。
午前三時二十八分、トラックは二十八分遅れで出た。主任は何も言わなかったが、積付け図の重量欄を赤ペンで囲んだ。
直が空いたバースを掃き始めると、無線から声がした。
「次の一台、予定より荷物が六パレット多い」
彼はほうきを壁へ戻し、まだ消していない赤ペンを受け取った。単純な仕事は、夜明けまで一度も来なかった。