網を繕う水曜日

漁村ソルテでは、女の子だけ午後の学校へ来なかった。

港の網繕いを任されていたからだ。家ごとに破れた網を娘へ持たせ、終わらなければ夕食を減らす。教師は「家庭の事情」と名簿へ書いたが、その事情が毎日続けば、少女たちは一生、値札も契約も読めない。

村政官サーシャは、網を取り上げなかった。代わりに作業の分け方を変えた。

「水曜の午後は共同繕い場を開きます。一家の娘一人へ押しつけず、船を持つ全世帯が交替で一人出す。男でも女でも、大人でも構いません。子どもは全員、学校です」

運営費は港の競りで売れた魚の百分の一。自家用の魚には掛けず、仲買人も漁師も同率で払う。銅貨の行き先は、繕い糸、教科書、教師の給金に分けて競り場の板へ毎週掲示した。

船主たちは渋い顔をしたが、帳簿の一番上にサーシャ自身の公用船分が記されているのを見て、反論を飲み込んだ。最初の水曜、母親三人しか来ないと思われた繕い場へ、老漁師が針を持って現れた。

「昔は俺もやった。手が覚えている」

次の週には船主の息子が座り、網元が丈夫な糸を寄付した。少女たちは、その横を走り抜けて学校へ向かった。

共同繕い場では、誰が何枚直したかを家別に競わせなかった。必要な網の枚数と残数だけを板へ書いた。手の速い者は遅い者を責めず、結び方を教えた。作業が早く終わった水曜、父親たちは初めて、娘が教室から戻る前に夕餉の支度まで済ませていた。

一月後、魚商人が競りの計算をごまかした。十三歳の少女ルチアが帳面を取り、魚籠の数と単価を掛ける。

「銀貨三枚、足りません」

商人は笑えなかった。周囲の漁師も同じ計算を覚えていたからだ。正しい代金が支払われると、ルチアの父は新品の木箱を一つ差し出した。

「うちの船の印を書いてくれ」

網元は箱を受け取り、娘の文字が乾くまで誰にも魚を入れさせなかった。競り場の大人たちは、その名を船印と同じ価値で見守った。

ルチアは筆を取り、船印の下へ自分の名を添えた。港で初めて、網ではなく文字を繕う水曜日が終わった。