角の合わないシーツ
早瀬里緒が一日だけ自宅へ戻ってしたかったのは、ベッドのシーツを洗うことだった。
同居人は「そんなことのために外出許可を使わなくても」と言った。里緒も、言葉にすればそう思う。けれど病院へ入る朝、汗で湿ったシーツを剥がす時間がなく、そのまま丸めて洗濯かごへ押し込んだ。あれが部屋に残っていることが、検査結果より気になっていた。
自宅の洗濯機は古く、大きなシーツを入れると片寄って止まる。里緒は近所のコインランドリーへ持っていった。透明な扉へ白い布を押し込み、同居人が頭痛を起こさない無香料の洗剤を選ぶ。
回り始めると、シーツは何度も持ち上がり、泡の中へ落ちた。里緒はベンチへ座り、残り時間の赤い数字を見た。二十八分。病棟へ戻る時刻まで二時間ある。余るくらいでちょうどいい。
乾燥機へ移す時、シーツの端が床へ触れた。同居人が「あ」と声を出したが、里緒はその部分だけもう一度洗おうとはしなかった。家の布は、床にも触れる。病室の白さとは違う。
乾燥機の中でシーツが膨らみ、窓いっぱいの雲のようになった。里緒は回転するたび見える小さな青いほつれを数え、同じ場所を三度見失った。温度を低めにしたため、終わっても中央が少し湿っている。里緒は追加で十分だけ回した。同居人は缶コーヒーを二本買い、一本を里緒の前へ置いたが、飲めないことを思い出して自分の鞄へ戻した。
乾いた布を抱えると、洗剤ではなく熱い綿の匂いがした。帰宅し、二人でベッドへ広げる。里緒が足元を持ち、同居人が頭側を持った。引く方向が合わず、中央に大きなしわが寄る。
「そっち、もう少し右」
「里緒から見て?」
「私から見て」
二度やり直して、縫い目が表へ出ていないか確かめ、四隅をマットレスへ掛けた。最後の一角だけゴムが強く、里緒の指では届かない。同居人が代わろうとしたが、里緒は膝を床につき、両手で布を引いた。
角がマットレスの下へ入り、張ったシーツのしわが一本、端まで走って消えた。