追放された守護神を担ぎ戻す

祭礼神輿担ぎイムラトは、祭りの日だけ必要とされる男だった。

神像を載せた重い輿を肩で支え、石段と泥道を歩く。祝福は司祭の功績、歓声は神のもの。担ぎ手は「木箱の脚」と呼ばれ、祭りが終われば倉庫へ追い返された。

彼の技能は、儀式の飾りとしか思われていなかった。

【神幸搬送:正式に招かれた祭神一柱を、信徒の待つ祭座へ運ぶ。搬送路は到着まで神域となる】

大神官は「神を運ぶのではない。お前たちが像を運ぶだけだ」と笑った。

その大神官は、千年王都を守った木彫りの路守神を古いと嫌い、金箔の軍神像へ取り替えた。路守神は排水路へ捨てられ、祭礼税は金像の建立費として三倍になった。

その夜、城門の境界が消えた。

路地の影から夜魔が湧き、扉も結界もすり抜けて人々を追う。金の軍神像へ司祭たちが祈っても、返るのは空洞の反響だけだった。大神官は神殿を封鎖し、市民を囮に逃げようとする。

イムラトは排水路へ飛び込み、泥の中から路守神を抱き上げた。片腕は折れ、彩色も剥げている。それでも集まった老人や子どもたちは、像へ一斉に頭を下げた。

「路守さま。もう一度、私たちの町へお帰りください」

正式な招きだった。

イムラトは壊れた荷車の棒二本で小さな神輿を組み、肩へ載せた。技能を一度使うと、最初の一歩から石畳へ白い光が走る。彼が通った道は神域となり、夜魔は光へ爪一本入れられない。

逃げていた人々が後ろへ続いた。神輿の列が長くなるほど安全な道も伸び、病院、孤児院、市場の避難民が一つの列へ加わる。

大神官が神殿門を閉ざしたが、祭座へ続く門は搬送路の一部だった。扉は自ら開き、路守神が元の台座へ着く。

その瞬間、白い道が王都の全街路へ広がった。夜魔は城外へ押し戻され、消えていた境界石が一斉に灯る。隣の金像は薄い金箔を落とし、中から空の木箱と着服台帳をさらした。

市民は歓声を神像だけでなく、その下で泥水を滴らせるイムラトへ向けた。

《職業が【祭礼神輿担ぎ】から【神域遷幸司】へ書き換わりました》