金竜の冠を外した朝
王太子の契約式に、金竜の幼子が運ばれてきた。
神殿の中央、宝石を散りばめた籠の中で、幼竜は激しく首を振っていた。王族も貴族も「神威に満ちている」と讃えたが、爪が床を削る音に近づける者はいない。
祭壇掃除係のハザルは、金のたてがみの下に赤い筋を見つけた。
毎朝、彼は冠も燭台も持ち上げて磨いている。見栄えのよい宝飾ほど重く、裏側ほど鋭い。誰も見ない場所を知るのが、掃除係の仕事だった。
契約式のため被せられた冠が大きすぎる。ずれないよう締めた革帯が、まだ柔らかな角の根元へ食い込んでいた。首を振るたび、冠の内側の飾り針が皮膚を刺している。
「触れるな」と神官長が命じた。「それは王太子殿下が外すものだ」
王太子は一歩も動かなかった。
ハザルは籠の扉を開けた。幼竜が牙を見せ、参列者が後ずさる。彼は額を床へつけるように低くなり、冠の留め具へ手を伸ばした。
「立派に見えなくても、あなたは竜です」
帯を一本緩める。幼竜の呼吸が少し楽になる。二本目を外すと、冠が傾いた。最後の留め金は血で固まっていたため、掃除用の油を一滴なじませた。
重い冠が、鈍い音を立てて床へ落ちる。幼竜の角の根元には、細い傷が輪になって残っていた。ハザルは自分の袖を裂き、油を拭ってから柔らかく巻いた。
幼竜は首を振った。金のたてがみが朝日のように広がり、神殿中へ光の粒が舞う。先ほどまでの荒い唸りは、安堵のため息へ変わった。
ハザルが傷へ清潔な布を当てると、幼竜は彼の胸へ額を押しつけた。
その瞬間、王太子のため用意された契約陣が消え、ハザルの胸元へ小さな太陽の印が浮かぶ。
誰も言葉を発せなかった。
幼竜は床に座ったハザルの腿へ登り、冠の代わりに自分の頭を載せる。宝石の冠よりずっと大きく、ずっと重い。それでも金の毛から伝わる陽だまりの熱は、冷たい石床で何年も働いた彼の膝を、誇らしい台座に変えていた。