鉄になった分だけ
灰山鉱山では、掘り出した石の重さに税がかかった。
鉄を含まない石も、崩落で混じった土も、坑口の秤に載れば同じ。鉱夫は税を減らすため坑内で選別し、狭い穴に屑石を積んだ。その山が支柱を押し、一番坑道が崩れた。
鉱山監督ラズリは救出された鉱夫の泥だらけの顔を見て、坑口の秤を鎖で封じた。
「石に税をかけるのはやめる。鉄になった分だけでいい」
新しい税は、精錬後の鉄十二本につき一本。
炉から出た鉄だけを公開秤で量り、屑石と失敗した塊には課さない。納めた一本は領主倉へ運ばず、半分を支柱と軌条、半分を共同工具へ変える。精錬記録と使途は坑口の鉄板へ刻む。
鉱山所有者が顔を赤くした。
「良質な鉱脈を持つ私だけが多く払う!」
「良質な鉄を多く売れるあなたが、同じ十二分の一を払うのです」
「鉱夫が鉄を隠すぞ」
「炉番、鉱夫、所有者の三人が一本ずつ数える。数字が違えば、その日の精錬は全量無税にします」
ごまかした側ほど損をする仕組みに、所有者は口を閉じた。古い坑口の秤は解体され、その鉄も共同工具へ回すと記録された。
税率が変わると、坑内で選別する必要がなくなった。屑石は安全に地上へ出され、崩れた一番坑道の入口が見えた。
ラズリは職人を雇うため、税鉄を売ろうとした。だが翌朝、鉱夫たちが新しい支柱を担いで並んでいた。
「これは労役ではない」
「知ってます」
片腕を包帯で吊った鉱夫が言った。
「十二本目が支柱になると分かった。なら、どこへ立てるかも自分で決めたい」
鍛冶師は税鉄を金具へ打ち、木こりは梁を削った。所有者さえ、自分の倉から太い樫材を一本出した。命令されたのではない。次に掘る場所が、自分たちの墓にならないと信じられたからだ。
再開の日、炉から十二本の鉄が並んだ。
ラズリは十一本を鉱夫へ返し、十二本目だけに村の刻印を打つ。その鉄はすぐ坑内へ運ばれ、新しい支柱の根元を締めた。
鉄板の最初の行には、こう刻まれた。
『納税一本。用途、一番坑道の命綱』
槌音が響き、閉ざされていた坑道に安全灯が一つずつ入っていった。