鉄虎猫の爪から釘を抜く

鉱山の最深部で鉄虎猫が道を塞いだ。

縞模様の一つ一つが鋼でできた猫型魔獣。爪で岩盤を裂き、怒れば坑道を崩すと恐れられている。鉱夫たちは出口へ殺到し、監督官は爆薬で生き埋めにしろと命じた。

鍛冶場の雑用係オルドは、逃げる足を止めた。

鉄虎猫は左前足を上げたまま動かない。爪を出そうとしては引っ込め、岩へこすりつけている。金属同士が擦れる、甲高い音がした。

「爪の隙間に何かある」

近づくと猫が唸り、坑道の支柱が震えた。オルドは腰の金槌を遠くへ放り、代わりに火箸だけを持つ。

「戦わない。俺は武器を作らせてもらえない雑用だからな」

自嘲した声に、猫の耳がわずかに立つ。

足元へ膝をつき、上げられた前足の裏を見る。肉球と鋼爪の境に、曲がった坑道釘が深く刺さっていた。誰かが仕掛けた罠らしく、抜こうとすると返しが開く形だ。

オルドは火箸で釘を固定し、小さな鑢で頭を削った。時間がかかる。監督官は爆薬を運ばせ、導火線を伸ばしている。

「急げ」と怒鳴られても、オルドは手を速めなかった。鉄虎猫の足が震えるたび、「もう少しだ」と声をかける。

釘の頭を細くし、刺さった方向へ押し戻す。最後に磁石で引くと、血に濡れた釘が抜けた。オルドは自分の袖を裂いて止血し、爪が正しく開閉するか一本ずつ確かめる。鉄虎猫は試すように爪を出し、彼の頬へ触れる寸前で、器用に柔らかな肉球へ戻した。

猫の咆哮が坑内を走る。

爆薬へ火を近づけた監督官が笑った瞬間、鉄虎猫は傷のない右足で岩盤を一撫でした。爆薬だけを囲む鉄壁が隆起し、導火線の火を押し潰す。

次にオルドの前へ座り、額の鉄冠模様を彼の腕へ刻んだ。坑道中の希少鉱脈が青く輝き、雑用係の目にも位置が分かる。

鉱夫たちが「鉱山主になれる」と騒ぐ中、オルドは傷口へ布を巻いた。

鉄虎猫は巨体を縮めるように伏せ、彼の膝へ頬を預ける。鋼に見えた縞毛は細い鎖帷子よりしなやかで、撫でると低い喉音が腕まで響いた。両腿を痺れさせる重さの下で、鍛えた鉄のような体温が、冷たい坑道をゆっくり暖めていった。