雪崩坂の十二柱

山腹のフィエ村では、雪崩が起きるたび下の十二軒だけが直撃を受けた。上手の家々は「自分たちには関係ない」と言い、十二軒だけでは防雪柵を建てられずにいた。

木工師エルシェは、斜面を横切る十二本の分離柱を設計した。雪を完全に止めず、流れを細く分けて家の左右へ逃がす防壁だった。

負担表は恩恵を二段にした。直撃を避ける十二軒は二口。雪崩で塞がれる街道を使う上手の二十八軒は一口。冬に村を離れる家は半口。銀貨でも木材でも作業でも払い、老人世帯と今年家を失った世帯は免除する。柱一本ごとの材料費は山小屋の扉へ貼り、余剰金は春の雪解け後に口数どおり返す。

上手の牧夫が不満を漏らした。

「俺の屋根は守られないのに払うのか」

エルシェは閉ざされた街道を指した。

「雪崩のたび、あなたの乳は町へ届かない。家を守る二口と、道を守る一口は同じではありません」

牧夫はしばらく黙り、翌日、自分の橇へ最長の柱を載せた。下手の住民も、助けを乞うのではなく二口分の仕事を先に終えた。昼食を作る者、縄を編む者、穴の深さを測る者。作業札は役目ではなく時間で数えられた。

工事前、下手の十二軒は『助けてもらう側』として頭を下げるつもりでいた。だが負担表には、二口を担う主要出資者として最上段に名が並んだ。上手の住民も施しではなく、街道を守る一口を買う。関係が変わると、昼食の席も上下に分かれなくなった。柱へ塗る油を余らせた日は、返金では割れないため全員で相談し、共同橇の手入れに使うと記録した。

十二本目が立った三日後、山が低く鳴った。白い塊が斜面を駆け下りる。雪は柱へ当たるたび二つに裂け、十二軒の左右を太い川のように通り過ぎた。

静寂のあと、家々の煙突から同時に煙が上がった。街道にも、人ひとり通れる黒い線が残っていた。

上手の牧夫は一番目の柱へ小さな山羊鐘を結んだ。

――家を守る柱、道を守る柱、どちらも同じ山に立つ。

風が吹き、十二の柱の上で最初の鐘が澄んで鳴った。