雲海に消えた第二艦隊

空軍参謀セイヴェルが「雲を眺める給料泥棒」と追放された翌日、第二飛空艦隊が雲海へ消えた。

新任艦長ラグモンドは、全艦へ最短高度を取るよう命じた。十二隻が一斉に上昇し、白い雲の上へ出る。

そこは速い追い風が吹く代わりに、午後になると雷雲が生まれる層だった。

先頭艦が急降下すると、後続艦も同じ穴へ殺到した。視界は腕一本分。互いの帆柱がぶつかり、三隻は方角を失う。地上から見えたのは、雲の中で光る稲妻と、落ちてきた一枚の軍旗だけだった。

「全艦が同じ航路なら迷わないはずだ!」

ラグモンドは叫んだ。

逆だった。同じ場所へ集めたから、避ける余地がなくなった。

セイヴェルは艦ごとに高度を百尺ずつ変え、上昇路と下降路を分けていた。雲の形ではなく、その一刻後に雲が育つ場所まで予測していた。艦長たちは色分けされた高度表を、臆病な遠回りだと笑っていた。

落下した軍旗には、雷で焼けた指の跡が残っていた。地上司令部は一隻も位置を特定できず、救難信号を出せば敵国にも艦隊の混乱を知らせることになる。最短航路を選んだ結果、救助だけは最も遠い仕事になった。

航海士がセイヴェルの旧表を広げると、十二隻には十二本の別の線が引かれていた。余計な遠回りに見えた線は、事故が起きた時に一隻の失敗を全艦へ広げないための間隔だった。

その頃セイヴェルは民間救難隊の観測塔で、落雷の間隔を数えていた。

「三隻は西へ流されています。赤い雷が二度続いた後、雲の下へ出るはずです」

救難艇は彼の指示した三つの高度へ散開し、行方不明艦を一隻ずつ発見した。夕暮れまでに乗員全員が救助される。隊長クレナは、セイヴェルへ空路参謀の銀眼鏡を手渡した。

「最短の道より、他の船と重ならない道を作れる者が空には要る」

救助された艦長の口から、帰還要請が伝えられた。事故の責任は問わない、今夜から高度表を作れという。

セイヴェルは銀眼鏡を掛け、雲へ目を戻した。

「第二艦隊との任用契約は、昨日の除隊で終了しています」