骨兵の席も予約済み

死霊術師イヴァルの骨兵が、街の広場で暴走した。

荷車に轢かれそうな子どもを救おうとして飛び出しただけだったが、白骨が走る姿に市民は悲鳴を上げた。衛兵は骨兵を砕き、イヴァルの冒険者証へ「市内召喚禁止」の印を押した。

救われた子どもは泣きながら骨兵へ手を伸ばしたが、衛兵は近づけなかった。広場には『死霊術師を追放しろ』という声も上がった。イヴァルは反論せず、砕かれた骨を一片ずつ拾った。

三人が散る前、テレサは何か言いかけた。だが衛兵に呼ばれて背を向けたため、イヴァルは最後の挨拶だったのだと決めつけた。

剣士テレサは衛兵詰所へ残り、呪符師マオリは宿へ、狩人グレンナは厩舎へ向かった。

イヴァルは一人で共同部屋に戻る。死霊術を嫌われて村を追われた時と同じ流れだった。庇ってくれた仲間も、騒ぎが大きくなれば距離を置く。

荷物をまとめ、骨兵の頭蓋だけ布に包む。せめて夜のうちに街を出よう。

骨兵の頭蓋には子どもが結んだ赤い紐が残り、捨てることも燃やすこともできなかった。

扉が開き、テレサが自分の剣を机へ置いた。

「衛兵に証言してきた。子どもの母親も同じ話をした」

マオリは宿の壁へ新しい符を三枚貼る。召喚陣を外へ漏らさない防音と遮蔽の符だった。

「地下倉庫を練習室として借りた。宿代に追加されたから、骨兵にも働いてもらう」

グレンナは厩舎札を差し出した。馬四頭分の隣に、荷車一台分の欄が増えている。

「街の外で呼ぶなら問題ない。そいつらを乗せる車だ」

イヴァルは布包みを抱き締めた。

「評判が落ちます。僕を外せば、皆は普通のパーティーに戻れる」

「普通の剣士は骨兵に背中を預けない」とテレサが剣を押しやる。

「普通の呪符師は骨に掃除を頼まない」とマオリ。

グレンナは窓から、宿の裏に停めた荷車を示した。荷台には四人分の旅箱と、骨兵用の空の木箱が並ぶ。

イヴァルが頭蓋を机へ置くと、マオリはその前にも小さな椅子を引いた。

市内で召喚はできない。それでも共同部屋の予約名から、イヴァルの名も骨兵の席も消えていなかった。