一つだけ本当の質問
紫津ハルネは血の決闘場で、PK《尋問官パル》と向き合った。
《真実問答》
互いに一度だけ質問できます。
虚偽回答者は最大HPの半分を失います。
ハルネのHPは四割。パルは満タン。質問を間違えれば勝てない。
パルが先に問う。
「お前は仲間を見捨てたことがあるか」
「ある」
HPは減らない。
ハルネは三年前、逃げ遅れた仲間を置いて帰還門へ入った。その罪を隠していない。
パルは笑う。
「正直者は弱い。次はお前の質問だ」
何を聞いても、PKは答えを用意している。殺した人数、目的、本名。嘘をつかなければ損はない。
ハルネは彼の剣先がわずかに震えるのを見た。
「私を殺した後、何も感じない自分でいられると思う?」
パルは即答する。
「思う」
最大HPの半分が消えた。
彼は驚き、膝をつく。
「質問が曖昧だ!」
「だから本音で答えるしかなかった」
パルは人を殺すことではなく、殺した後に何かを感じる自分を恐れていた。無感情なPKを演じ続け、名前まで捨てた。
残りHPは半分。まだハルネより多い。
パルが斬りかかる。
ハルネは避けず、言う。
「感じてもいい」
剣が首元で止まった。
パルのHPがさらに一減る。攻撃を中断したためではない。質問への回答が現在も継続判定され、「何も感じない自分でいられる」という認識が崩れたのだ。
彼は剣を落とす。
《回答〈思う〉を虚偽と判定》
《継続認識の変化を確認》
決闘場の観客は、パルが剣を落としたことへ罵声を浴びせた。彼らは無感情なPK同士の殺し合いを見に来ていた。
ハルネは自分の過去を語らない。仲間を見捨てた事実を正直に答えたからといって、許されたわけではない。
パルも同じだった。
「感じたら、殺したことが軽くなるのか」
「重くなる。でも、重いって分かる人間しか下ろせない」
真実問答は相手を裁く魔法ではなく、自分の認識から逃げられない場を作るだけだ。
パルは決闘辞退を選び、PK履歴の公開へ同意する。ハルネは勝利報酬を受け取らず、最初の被害者の名を彼に読み上げさせた。
《決闘勝者:紫津ハルネ――真実を言わせた者ではなく、相手が自分の嘘を信じ続けられなくした者》