一枚だけ白くなる
日曜の午後四時、橘川穂波は、洗いたての寝具で眠る計画を諦めきれずにいた。
朝のうちにシーツと掛け布団カバーを外し、コインランドリーへ持っていく。乾燥を待つ間に喫茶店で本を読む。そんな休日を想像して、昨夜は新しい柔軟剤まで買った。けれど目を覚ましたのは三時四十七分で、布団は昨夜のまま身体へ絡みついていた。
天気予報には、一日中晴れの印が並んでいる。窓の外では、向かいのベランダの洗濯物がすでに乾いた形で揺れていた。穂波は、使われなかった晴天まで自分が無駄にしたように感じた。
全部外して洗うなら、今からでも夜には間に合う。けれど布団カバーの四隅の紐をほどくことを考えると、腕が重い。コインランドリーへ行くために着替えるのも面倒だった。
クローゼットの下段から、新しい枕カバーだけを出した。以前、二枚組で買ったうちの一枚。包装を開けると、糊のきいた布の匂いがした。
古いカバーを外し、新しいものへ枕を押し込む。端が少し余り、角はきれいに合わなかった。それでも、ベッドの上に白い四角が一つできた。
シーツには細かな皺があり、掛け布団には昨日食べた菓子の屑が一粒ついていた。穂波はそれだけを指で拾い、ごみ箱へ落とす。柔軟剤のボトルは未開封のまま洗濯機の上へ置いた。
寝具を全部替えられなかった休日ではなく、頭を置く場所を一枚だけ替えた休日。そう言い直すと、白い布が少し広く見えた。
洗濯かごの底には、柔軟剤を買った店のレシートが丸まっていた。〈寝具を整える〉ために支払った金額まで、まだ実行されていない約束に見える。穂波はレシートだけを捨て、ボトルはそのままにした。買ったものは今日使わなくても、明日以降の自分を急かす請求書にはならない。
枕以外は昨日と同じ匂いだった。穂波は、その混ざり方が今夜の寝床にはちょうどいいと、無理に言い聞かせず思えた。
穂波は新しい枕へ頬をつけた。今夜また眠ることに、昼まで寝た罰を加えなくていい。冷たい側を探さなくても、そこは最初から冷たかった。