三人分のパン

昼休み、私はいつも購買で三人分のパンを買った。

親友は焼きそばパン。好きな人はクリームパン。私は残ったもの。

その日も同じように三つ買い、教室へ戻った。

二人は窓際で待っていた。

親友の顔が妙に赤い。

好きな人が言った。

「今日から、付き合うことになった」

私は三つのパンを抱えたまま止まった。

親友と同じ人を好きだと分かってから、半年。どちらも告白していないと思っていた。

「昨日、帰りに」

親友が小さく言った。

抜け駆けだと思った。

でも、好きな人から告白したのだと続けられ、怒る場所までなくなった。

「そっか」

私は焼きそばパンとクリームパンを机へ置いた。

残ったのは激辛カレーパンだった。昨日、購買のおばさんに勧められた新商品。

「おめでとう」

言ってから一口かじった。

想像より辛かった。

涙が一気に出た。

「辛い?」

好きな人が心配そうに聞く。

「辛い」

嘘ではない。

親友は私の顔を見つめた。辛さ以外も分かっている目だった。

「水、買ってくる」

親友が立とうとした。

私は袖をつかんだ。

「行かないで」

言った瞬間、教室の音が消えたように感じた。

親友の手が震えた。

「ごめん」

「謝らないで」

私は昨日まで何度も想像していた。親友が選ばれたら笑って祝う。友情を壊さない。きれいに失恋する。

実際には、カレーパン一つで全部崩れた。

好きな人は困った顔をしていた。

その顔を見るのもつらくて、私はパンの袋を見つめた。

「今日は二人で食べて。私、保健室行く」

「辛いだけで?」

「辛いだけだから」

教室を出ると、親友が追ってきた。

廊下の角で、私は泣いた。親友も泣いた。

「言えなかった」

親友が言う。

「告白されたとき、あなたの顔が浮かんだ。でも断るのも違うと思った」

「正しいよ」

「正しくても、痛いね」

私はうなずいた。

しばらくして教室へ戻ると、好きな人が三つのパンを机に並べて待っていた。

「カレーパン、半分もらう」

「辛いよ」

「二人だけ甘いの、悪いから」

親友が焼きそばパンを三つに分けた。

その日、三人分のパンは全部少しずつ交換された。

関係は元どおりにはならなかった。でも、私一人だけが辛い味を食べる形にもならなかった。

翌日から私は、二人分のパンしか買わなくなった。

自分の分は、自分で選ぶことにした。