処刑台の朝食
処刑人サヘルは、死刑囚の最後の食事を一口だけ共にする。
それがこの町の作法だった。パンを分ければ、囚人は空腹を残さず死ねる。その代わり、処刑人は囚人が生涯に味わった飢えを引き受ける。腹が減るのではない。骨の中から、食べても食べても満たされない穴が開く。
今朝の囚人は十二歳の盗人メファだった。
皿には固い黒パンが一枚。少年は半分に割り、大きい方をサヘルへ差し出した。
「俺は昨日、鼠を食ったから」
見届けの商人たちが笑う。メファは市場の穀倉へ忍び込み、小麦袋を三つ盗んだ。だが袋は貧民区で見つかり、百人の子供へ分けられていた。
「食べなくていい」と少年は囁いた。「俺、ずっと腹が減ってた。これを持っていったら、あんた死ぬまで苦しい」
サヘルはパンを噛んだ。
味はしなかった。代わりに、凍った路地で靴革を煮た夜、母の乳が出ず妹が泣き止んだ朝、腐った林檎を弟へ譲った夕暮れが喉を通った。少年の十二年分の飢えが腹へ落ち、内臓が獣のように鳴いた。
「執行を」
穀倉主が手袋で鼻を覆う。その指には、飢饉の間に隠した倉の鍵が光っていた。
サヘルは絞首台の踏板へ立つ。縄を掛けるふりをして、メファの耳元で言った。
「走れと言ったら、皿を投げろ」
彼は槓杆を引いた。落ちたのは少年ではなく、穀倉主の足元の床だった。地下へ隠された貯蔵庫が口を開け、腐るほど積まれた小麦が露わになる。
群衆の空気が変わった。
メファが皿を投げ、縄から抜ける。商人の護衛が剣を抜いた。サヘルの飢えが反応した。彼らの腰袋から干し肉の匂いがした瞬間、理性より先に身体が飛びかかった。
気づけば護衛三人が倒れ、サヘルの口は血で赤かった。肉を噛んだ記憶はない。喉だけが満足そうに鳴る。
穀倉は開放され、子供たちは小麦を運び出した。メファも逃げ延びた。誰も処刑されなかった。
夕方、少年が焼きたてのパンを持って戻った。
サヘルは一口食べ、二口、三口と飲み込んだ。味は分かる。温かさも分かる。それでも腹の穴は広がり続ける。
「うまい?」とメファが尋ねた。
処刑人は頷いた。だが笑った口の奥には、人のものではない二列目の牙が生え始めていた。救った飢えは消えず、彼の身体で新しい獣になっていた。