勇者の必殺剣は返品できます

木箱職人のガノルは、勇者パーティーを追放された。

理由は、収納した品を元の持ち主へ返すことしかできないからだ。

【固有スキル《返送収納》:使用者宛てに渡された対象を格納し、送り主へ同じ状態のまま自動返送する】

薬を入れても自分では取り出せない。剣を預かっても所有者の手元へ戻る。勇者レイガは「犬でもできる」と笑い、報酬を払わず荒野へ置き去りにした。

半年後、ガノルは辺境町で木箱を作っていた。

そこへ魔王を倒したレイガが凱旋する。だが英雄は、王命で接収された魔剣を返す気がなかった。町長の娘を見つけると酒席へ連れ込もうとし、止めた衛兵を斬り伏せた。

ガノルが間へ入る。

「その子は荷物ではない」

「追放された木箱屋が、英雄に説教か?」

レイガは観衆へ見せつけるように魔剣を抜いた。

魔王を消滅させた必殺技《天断》は、斬撃を光へ変え、城壁ごと敵を両断する。町の背後には避難中の住民がいる。かわしても、受け止めても、数百人が死ぬ。

「お前にくれてやるよ。受け取れ」

英雄はそう宣言して剣を振った。

空を裂く光がガノルへ届く。送り主は明確で、宛先も本人が指定した。これは攻撃である前に、レイガが渡すと宣言した品だ。

ガノルは避けなかった。

一度だけ返送収納を開き、光の斬撃を受領する。

《天断》が彼の胸元で箱へ畳まれた。

次の瞬間、同じ速度、同じ威力、同じ殺意を保ったまま送り主へ戻る。レイガの魔剣だけが根元から砕け、英雄の証である祝福紋を両断した。本人の命を奪わなかったのは、斬撃が「英雄の資格を守る者を斬らない」という制約まで保存していたからだ。

祝福を失ったレイガは膝をつく。

王都から同行していた審問官が、未払い報酬と暴行の記録を読み上げた。町長の娘はガノルの背後から出て、壊れた魔剣を木箱へ入れる。

「これは返品しなくていいです」

笑いが広がる中、ガノルの鑑定札だけが厳かな音を立てた。

【職業が《木箱職人》から《因果返納官》へ書き換わりました】