勝利の寝台
ドルカが眠れるのは、今夜の一時間だけだった。
石室の中央に寝台があり、その周囲でリシュネが銀の砂時計を返す。上の砂が落ちきる前に夢魔を殺せなければ、城中の眠る者が目を覚まさなくなる。
「九度目の勝利になる」
「分かっている」
彼の能力は、夢の中で倒した敵を現実から消すことだった。ただし一勝するごとに、その後の人生から一時間ぶんの睡眠が永久に失われる。
一勝目のあと七時間しか眠れなくなった。五勝目には三時間。八勝した今は、一夜に一時間だけ。夢を見られるのも、その短い間だけだった。
「勝てば、もう二度と眠れない」
リシュネが彼の手を握る。「別の方法を探そう」
石室の外で、眠った子どもが母の腕から滑り落ちた。夢魔はすでに皆の夢を深い井戸へ引いている。
ドルカは寝台へ横たわった。
「起きている者が一人いれば、眠る者を守れる」
目を閉じる。
夢の中の石室には扉が百枚あった。どれを開けても、眠る人々の記憶が見えた。誕生日、初雪、恋人の横顔。その中心で夢魔は巨大な枕のように膨らみ、奪った夢を食べている。
ドルカは剣を抜いた。夢魔は彼自身の姿になった。
「私を斬れば、おまえは夢を失う。夢がなくなれば、望みも恐れも、現実との境も薄れる」
「それでも朝は来る」
「おまえには来ない」
一太刀で斬った。
砂時計の最後の粒が落ちる直前、城中の人々が目を開けた。
ドルカも起き上がる。
リシュネが泣き笑いで抱きついた。彼はその肩越しに、夢の石室と同じ百枚の扉を見た。現実の壁には何もないはずなのに。
「終わったよ」と彼女が言う。
「何が現実だ」
「ここ。私の声を聞いて」
ドルカは瞬きをした。瞼が下りない。指で触れると、目の上下に透明な膜が生え、眠るための肉の蓋が消えていた。
その日から彼は一度も横にならなかった。
三日目、リシュネが食事を運ぶと、彼は空の椅子へ剣を突きつけていた。
「夢魔がいる」
「そこには誰もいない」
ドルカは振り向く。彼女の顔にも扉が重なって見えた。
「なら、おまえが夢か」
眠らない英雄の瞳には、朝も夜も同じ黒さで映っていた。