十三号実験体、公開廃棄

企業都市アルカ=ノードでは、処刑を「廃棄」と呼ぶ。

十三号実験体セレスタは、公開廃棄区画の黄色い線に立たされていた。白い患者服、裸足、首筋には製造番号。観覧デッキでは投資家たちが飲み物を片手に端末を構えている。

端末には、彼女の開発費と廃棄費が並んでいた。命ではなく損失額として眺めれば、投資家は安心して拍手できる。廃棄後には新型十四号の予約販売が始まる予定だった。

研究主任クォンザはマイクへ告げた。

「十三号は命令系統から逸脱し、避難区画の市民を無断で救出しました。制御不能な兵器は、ここで処分します」

救出された市民が一人も観覧を許されていないことを、彼は言わなかった。

セレスタが命令に逆らったのは、避難扉の閉鎖時刻を七秒遅らせるためだった。その七秒で四十二人が入った。主任の報告書では、彼らは最初から避難済みになっている。

天井から処刑用プラズマ刃が降りる。

「出力三十パーセント。切断開始」

青白い刃がセレスタの肩から腰へ走った。鉄板なら十枚を一息に分断する温度だ。床の黄色い線が溶け、蒸気が立ち込める。

主任は切断面の映像を待った。

しかし霧が引くと、セレスタは両腕を体側へ下ろしたまま立っていた。患者服にも線一本ついていない。プラズマ刃のほうが途中から二股に割れ、彼女の輪郭を避けて床を焼いていた。

技師が小声で言う。

彼は十三号の耐熱限界を設計した本人だった。限界は千二百度。いま床は四千度を超えている。正常な計器ほど、目の前の結果を否定できなかった。

「対象表面で、熱量が消失しています」

「計器異常だ。百パーセントへ上げろ」

警告灯が赤くなる。安全規則を無視した最大出力に、観覧デッキの投資家たちも席を離れた。

刃が再び落ちた。

閃光で防爆窓が黒く染まり、床材が液体になって排水溝へ流れる。冷却剤が噴霧され、白い雲が区画を埋めた。

クォンザは端末を睨む。

生命反応は消えていない。

霧の中心で、セレスタはまだ黄色い線の上にいた。線は溶けて消えたのに、足の位置は一ミリも変わっていない。

「主任」

技師の声が裏返る。

防御演算器が、対象を測るため自動で上限を引き上げていた。戦車級、要塞級、軌道艦級。表示が次々に書き換わる。

最後に数字が消え、黒い画面へ白文字だけが残った。

《対象防御性能:測定不能》