午前十時の朝活

梢が目を覚ましたとき、カーテンの隙間から入る光はもう朝の色ではなかった。時計は午前十時六分。日曜日を半分なくした気がして、布団の中でスマートフォンを開いた。

最初に流れてきたのは、五時半に起きたという同年代の女性の投稿だった。白湯、読書、英語の勉強、手帳、朝日を浴びながらの散歩。〈休日こそ自分を整える時間〉という文字の横に、きれいに切った果物が並んでいる。

梢の枕元には、昨日脱いだ靴下と、空になったペットボトルがあった。昨夜は動画を見ながら寝落ちし、充電ケーブルが頬に跡をつけている。

画面を送ると、別の人のモーニングルーティンが始まった。ベッドメイク、観葉植物への水やり、プロテイン。世界には、梢が眠っている間に自分を何度も整えた人がいるらしい。

焦って起き上がり、まずシーツを直そうとした。けれど布団を持ち上げたところで、昨日の疲れが肩に戻ってきた。土曜は出勤で、帰宅したのは午後十時。夕食のカップスープの容器も、流しに残っている。

休みの日に寝たのではなく、休みの日まで眠る必要があったのかもしれない。

梢はカーテンを開けた。まぶしさに目を細める。朝日は逃したが、午前十時の光も部屋を明るくした。

冷蔵庫にはヨーグルトしかなかった。果物を切る代わりに、袋の底に残っていたコーンフレークを直接入れる。量は少なく、見た目も茶色一色だった。

投稿用なら撮らない朝食を、梢は窓辺で食べた。英語の勉強もしない。散歩も、手帳も、今日は予定に入れなかった。

SNSのアプリを閉じる前に、五時半起きの投稿へハートを押した。早起きできる人を否定しなくても、自分の寝坊は許せる。二つは競争ではないはずだった。

食べ終えた器を流しへ運び、昨日のカップだけ水につけた。洗うのはあとでいい。布団も、片側を軽く折っただけにした。

午前十時十八分。日曜日はまだ残っている。始まりが遅くても、今日が欠席になるわけではない。

梢はもう一度あくびをし、温かいお茶をいれるためだけに湯を沸かした。