呪われた首飾りの値札

商隊主ボルケスが聖女ミリエトを解雇した最初の市で、金の首飾りが客の喉へ噛みついた。

比喩ではない。試着した貴婦人の首で鎖が蛇のように縮み、外そうとした店員の指まで締め上げた。衛兵が剣で切ると、首飾りは黒い煙を吐き、露店の客たちを互いに殴らせた。

騒ぎが収まったころには、商隊の商品三十箱へ封鎖札が貼られていた。

「仕入れ先に騙された!」

ボルケスは叫んだ。だが帳面を見ると、その首飾りは去年から何度も売買されている。同じ品で事故が起きた記録はない。

違ったのは、入荷のたびにミリエトが品物へ触れなくなったことだった。

彼女は呪いを消していたのではない。祝福を一滴流し、悪意のある品だけを黒く曇らせていた。曇った品を別箱へ移し、専門家へ送る。誰も呪物を見たことがないから、商隊主は「商品を撫でて時間を浪費する聖女」を首にした。

衛兵は全箱を一月検査すると告げた。市への出店許可も停止され、信用を重んじる宝石商たちは取引を取り消した。首飾り一つの利益を急いだ結果、商隊は一季分の売上を失った。

雇われた祓魔師は呪いを恐れ、箱ごと聖炎で焼いた。中には無害な宝石も契約書も入っており、商隊は証拠と商品を同時に失う。保険組合は検品記録がないことを理由に補償を拒否し、ボルケスの信用札はその日の終わりに最低等級へ落ちた。

同じ市の反対側で、ミリエトは共同市場の検品台に立っていた。市場長スェラが、彼女の前へ古い玩具を置く。木馬の腹だけが薄黒く曇った。

割ってみると、中から持ち主を病ませる針が出た。

「消すより、見つけられることが大事なのね」

「はい。危険だと分かれば、触らずに済みます」

市場は検品済みの札を導入し、その日のうちにミリエトへ常設の工房を与えた。

夕方、封鎖された商隊から早馬が来た。

「全商品を一度見るだけでいい。戻れば利益の一割を渡す」

ミリエトは新しい検品札を一枚、返事に添えた。

「商隊の商品鑑定契約は、解雇金を受け取った時点で終了しています」