四人で一つの秒
巻島ユラギが荷車を押す間、三人の子供NPCは膝を抱えて動かなかった。
《共有タイマー》
パーティメンバーが一人動くごとに、現実一秒あたり残り時間を一秒消費します。
残り:60秒。
四人で同時に走れば、十五秒でゼロになる。だから上位組はパーティを一人まで減らし、護送対象を置き去りにしていた。
ユラギは三人を荷車へ乗せ、自分だけが動く。子供が身じろぎすると消費が二倍になり、残り時間が早く減る。
「動くなよ」
「怖くても?」
「怖いって言うのは動きじゃない。いくらでも言え」
荷車は瓦礫に引っかかった。ユラギが押しても進まない。残り三十秒。
一人の子供が降りる。
「次は僕が押す。お兄ちゃんは止まって」
ユラギは荷台へ座る。動く者が交代しても、消費は一秒ずつ。次の坂では二人目、最後の橋では三人目。四人は走者と荷物を入れ替えながら、常に一人だけ動いた。
ゴール前、残り四秒。荷車では段差を越えられない。
「一秒ずつ使おう」
四人が横に並ぶ。一人目が一歩進み停止。二人目、三人目。最後にユラギが全員の手を引き、線を越えた。
《残り:0秒》
世界記録には届かない。だが共有タイマーの履歴には、四人全員が同じ距離を動かしたと記録されている。
《パーティ完走を確認》
《同時移動最大人数:1》
ゴール後、子供たちは自分が押した距離を競い始めた。誰が最長だったかではなく、誰の一秒が一番怖かったかを笑い合う。
共有タイマーの履歴には、動いていない時間も残っていた。《待機》《見守り》《次の走者へ譲る》。どれも消費ゼロだが、コースを進めるために必要だった。
ユラギは一人で走ればもっと速かった。それでも四人の記録には、誰かが止まった瞬間を別の誰かが引き受けた六十回の交代が刻まれている。
子供の一人が、待機時間にも名前をつけた。《次を信じる時間》。
タイマーは動いた者しか数えない。けれど、止まって順番を譲る者がいなければ、一秒は四倍の速さで失われていた。ユラギたちは最短時間ではなく、最も長く一秒を保ったパーティになった。
《最小消費記録を更新――速い一人へ時間を集中するのではなく、一つの秒を四人で順番に使いました》