埃の内側

燻蒸のため七日間封鎖された県立文書庫で、監視画面の中央通路に突然、小包が現れた。午前十一時五十九分には何もなく、正午に可動書架が自動点検を始め、十二時一分には茶色い箱が床に落ちていた。送り状の日付は当日で、中には半世紀前に失われた知事の密約書があった。

封鎖前に書庫へ入れたのは、主任司書の児玉、郷土史家の篠崎、寄贈者代理の野口の三人。児玉は密約の公開を止めたく、篠崎は発見者になりたく、野口は一族の汚名を消したかった。封鎖後は毒性ガスが満ち、人が隠れる余地もない。監視映像は報道局にも同時送信されており、途中で差し替えることもできなかった。小包が落ちた瞬間だけ、三人の表情が画面の端に映っていた。

調査員の鳴神が挙げた手掛かりは三つだった。包装紙の折り目の内側にだけ、文書庫特有の灰白色の埃が付いている。箱の両側には、可動書架の隙間と同じ七センチ間隔で平らな圧痕がある。そして自動点検の時刻は、児玉の管理者番号で正午に変更されていた。

篠崎は、送り状の日付が封鎖中だから外部犯だと言った。野口は燻蒸装置の配管から箱を入れたのではないかと疑った。児玉は、点検時刻の変更は電力節約のためだと説明した。だが正午は報道陣が再開館の映像を生中継する時間であり、小包が現れる瞬間を最も多くの人に見せられる。篠崎は児玉が驚いた演技をしたと言い、野口は日付を見てすぐ外部犯だと決めつけた。児玉は二人の憶測を退け、設定変更には実務上の理由があったと繰り返した。

鳴神は二列の書架を少し開いた。奥から包装紙と同じ埃が舞った。箱は封鎖前から、書架同士が閉じても潰れきらない保守用の隙間に挟まれていたのだ。点検で片方が動けば、支えを失って通路へ落ちる。

「内側の埃は包装後に書庫へ置かれた証拠、二本の圧痕は七日間挟まれていた場所、正午の設定変更は落下時刻を選んだ者を示します。児玉さんは未来の日付の送り状を貼り、箱を隙間へ仕込み、書架に配達させた。荷物は今日届いたのではなく、今日になって隠れ場所から押し出されたのです。封鎖は侵入を防ぐ壁ではなく、七日前の工作を疑わせないための保証書でした。送り状の日付は、箱が落ちる日に合わせて先に印刷しただけです。正午に現れることを知っていたからこそ、あなたは報道中継を設定し、発見者ではなく目撃者を大勢つくったのです」