墓守たちの低い塀
古墓の村エンデでは、新月の夜になると墓地から骨人が一体ずつ歩き出した。襲うわけではない。ただ家の戸を叩き、生前の名前を呼ぶ。住民は眠れず、墓を持つことさえ恐れるようになった。
墓守ノクスは、高い聖壁ではなく膝ほどの低い塀を墓地の周りに巡らせると言った。
「骨人は埋葬域の印を越えられません。必要なのは高さではなく、切れ目のない境界です」
これまで寺院は埋葬のたび高額な「鎮魂税」を取っていた。ノクスはそれを廃し、一つの墓区画につき年一度、灯油一瓶か夜番一回のどちらかとした。身寄りのない墓は、墓地で育つ香草の売上から賄う。受け取った瓶数、夜番名、香草代は門の裏に刻む。多く払っても立派な場所は買えず、古い墓も新しい墓も塀の内側では同じだった。
「先祖が多い家ほど損だ」と豪農が言った。
「墓が多い分、灯りも多く要ります。ただし生きている人数や財産には課しません」
夫の墓一つしかないエデは、灯油ではなく夜番を選んだ。
「怖いけれど、夫の名を誰かに迷惑と思わせたくないから」
その言葉を聞き、豪農も石材を出した。若者は香草畑を広げ、子どもは小石を洗った。誰も死者を追い払うためではなく、死者が帰る場所をはっきりさせるために働いた。
寺院の古い金庫からは、使途のない鎮魂税が銀貨二十三枚見つかった。ノクスは新しい塀へ流用せず、墓を持つ家と身寄りのない墓の基金へ同額ずつ戻した。『盗られた金で始めれば、この塀も古い税の続きになる』。銀貨を受け取った者の多くは、そのうち一枚で灯油を買い直した。返された後に自分で差し出す一瓶は、徴収された一瓶とは違って見えた。
低い塀が閉じた最初の新月、骨人が墓穴から立ち上がった。塀まで歩き、向こうの家々を見たが、足を越えさせることはなかった。やがて墓標のそばへ戻り、静かに横たわった。
エデは門柱に一番目の灯を置いた。続いて二番、三番と灯が並ぶ。
新しい札にはこう刻まれていた。
――ここから内は、忘れないための場所。
低い塀の上で灯が一周し、村の戸を叩く音は初めて一度も鳴らなかった。