壁を登れない青い水

北の穀倉は、雨が降らなくても壁が濡れていた。地面の水を煉瓦が吸い上げ、麦袋の下段だけが黴びる。管理官は暖炉を増やしたが、薪代が三倍になっても黴は消えなかった。

建築士コルネは、二本の煉瓦柱を机に立てた。下端を青く染めた水へ浸す。一方の柱には、途中に薄い樹脂布を一枚挟んだ。

「壁が水を吸うなど迷信だ」

管理官が言い終える前に、何も挟まない柱の青色は指二本、三本と上へ登った。十分後には上の煉瓦まで染まる。

樹脂布を挟んだ柱は、青がその線でぴたりと止まった。

コルネは穀倉の壁を一段だけ持ち上げ、基礎と煉瓦の間へ同じ防湿層を通した。大工事に見えたが、壁を短い区間ずつ支えたため、倉を空にせず二日で終わった。

翌朝、管理官は壁に押し当てた乾燥紙を剥がした。以前なら茶色く湿った紙が、白いままぱりりと鳴る。床際の黴臭も薄れ、試しに置いた麦粉はさらさらと指の間を落ちた。

暖炉八基のうち七基を消しても、湿度札は安全域を保った。薪代は一日で銀貨四十枚減った。黴で捨てていた麦は月に二百袋。それも止まる。

管理官は、魔法乾燥炉の購入契約を取り消した。

「国境沿いの穀倉は十一。冬になる前に全部へ、この水を止める層を入れろ」

管理官は、壁を乾かすため倉の窓を開け放っていた。そのせいで鼠と雨が入り、衛兵を四人増やしていた。防湿層を入れた区画では窓を閉めても壁が乾き、警備費まで不要になる。

三日後、改修前の壁際と改修後の壁際へ同じ麦袋を置き、底の重さを量った。旧区画の袋は水を吸って二キロ増え、改修区画は変化ゼロ。粉に挽くと、旧麦は団子になり、改修麦は白い煙のように流れた。パン職人がその場で焼いた二つを割ると、片方だけ酸っぱい黴臭がした。管理官は、毎月捨てていた二百袋の損失額を聞く前に椅子から立ち上がった。

倉番は壁際の麦袋を一段高く積み直し、空いた床面積まで帳簿に書き足した。

彼はコルネの職人札に王家の封蝋を押した。

「国家穀倉の改修主任として、正式に採用する」